5月, 2025年

国際銅研究会(ICSG)2025年4月総会報告(プレスリリース)

2025-05-08

国際銅研究会(ICSG)2025年4月総会報告

2025年5月7日
日本鉱業協会 企画調査部

 

2025年の春季国際銅研究会(ICSG)総会は、4月25日にポルトガル共和国のリスボンで開催され、加盟国政府代表及び業界の代表者が参加した。4月28日付けで発表されたプレスリリースは次のとおりである。

 

1.2025年と2026年の世界の銅需給予測

1)銅鉱石生産

世界の銅鉱石生産量は、対前年比で2025年は2.3%、2026年は2.5%、それぞれ増加することが見込まれる。

  • 2025年の生産量は、2024年比2.3%増の2,350万トンになると予測した。増加要因は、カモア・カクラ銅鉱山(DRコンゴ)及びオユ・トルゴイ銅鉱山(モンゴル)の増産起業、マルミシュ銅鉱山(ロシア)の操業開始で、これらの増産がオーストラリア、インドネシア、カザフスタンでの減産を補う見込みである。
  • 2026年の生産量は、2025年比で2.5%増加すると予測している。中国を含む新規操業および増産投資プロジェクトの継続的な増加に加え、2025年に一時的に落ち込んだインドネシアの回復、チリ及びザンビアの増産が要因である。
  • 2025年、2026年ともに、DRコンゴ、ブラジル、イラン、ウズベキスタン、エクアドル、エリトリア、ギリシャ、アンゴラ、モロッコなどでの中小規模鉱山の新規操業や増産起業も生産量を押し上げる。

 

2)銅地金生産

世界の銅地金生産量は、対前年比で 2025年は2.9%、2026年は1.5%、それぞれ増加することが見込まれる。

  • 2025年の生産量は、2024年比で2.9%増加すると予測している。中国の生産能力の継続的な拡大に加え、インドネシア、インド、DRコンゴなどの新規製錬所の操業開始が要因である。
  • 内訳は、電気銅が3%増、SX-EWが3.3%増、二次製錬が2.2%増となる見込み。
  • 2026年の生産量は、2025年比で1.5%の増加にとどまると予測している。特に電気銅は鉱石の供給制約の影響により伸びが鈍化することが見込まれる。一方、SX-EWは2.2%、二次製錬は6.4%、それぞれ増加すると予測している。

 

3)銅地金消費

世界の銅地金見掛け消費量は、対前年比で2025年に2.4%、2026年は1.8%、それぞれ増加することが見込まれる。

  • 2025年の消費量は、2024年比で2.4%増加すると予測している。国際的な貿易政策の不確実性と、それによる経済成長の鈍化を見込み、前回2024年9月に予測した2.7%増から下方修正した。
  • 中国の消費量は、2025年に2%、2026年に0.8%、それぞれ増加すると予測した。アジア地域全体では引き続き成長が見込まれるものの、ヨーロッパ、日本、アメリカ合衆国など他の主要消費国では需要の伸びは限定的である。
  • しかしながら、エネルギー転換や都市化、デジタル化(データセンター)、インドなどにおける半導体生産拠点の新設などが引き続き銅需要を支えることが見込まれる。

 

4)銅地金需給バランス

世界の銅地金需給バランスは、2025年は28.9万トン、2026年は20.9万トン生産が消費を上回る見込みである。

  • ICSG は、グローバル市場のバランスは様々な需給要因により変化するものであると認識している。そのため、実際の需給は予見できない要因により ICSG の予測と乖離することがある。
  • ICSG は、需給予測の際に中国の在庫(国家備蓄、生産者、消費者、貿易業者、保税区域)の増減は考慮していない。これらの在庫は、在庫積み増しや放出によっては世界の需給を大きく変える要因である。なお、中国の見掛け消費量は(生産+輸入−輸出+/-SHFE 在庫増減)によって算出している。
  • ICSGは、2025年の需給バランスについて、28.9万トン生産が消費を上回ると予測しており、生産過剰幅は前回2024年9月予測の19.4万トンから増加した。2026年の需給バランスについては20.9万トン生産が消費を上回る見込みである。

2. ICSGの次回総会日程

2025年10月にポルトガルのリスボンで開催予定。

以上

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国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)2025年4月総会報告(プレスリリース)

2025-05-08

国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)2025年4月プレスリリース

2025年5月7日
日本鉱業協会 企画調査部

2025年の春季国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)総会は、4月24日にポルトガル共和国のリスボンで開催された。

1 2025年の世界の鉛需給予測

1)鉛消費

  • 2025年の世界の鉛地金の消費量は、前年比1.5%増の1,319万トンになる見通しである。
  • アメリカ合衆国の鉛地金消費量は、2024年には前年比8.3%減となったが、2025年は2024年比で4.3%増となる予想である。ヨーロッパでの鉛地金の消費量は、前年比で4.4%減少したが、主因は自動車生産減であった。しかしながら、2025年には1.8%増となる見込みである。
  • 中国の地金消費量は、2024年に前年比1.3%減となったものの、2025年は0.9%増になる見通しである。
  • 上記以外の国や地域における鉛地金消費量は、ブラジル、インド、日本において2024年比で増加するものの、韓国では減少する見込みである。

 

2)鉛生産

  • 2025年の世界の鉛精鉱生産量は、前年比で2.3%増の462万トンになる見通しである。これは、中国、メキシコでの鉱山生産量の増加に加えて、ヨーロッパにおいて新たにボスニア・ヘルツェゴビナ、アイルランドおよびロシアの新規鉱山が試験操業を開始していることから通年での増産が見込まれるためである。
  • 2025年の世界の鉛地金生産量は、前年比1.9%増の1,327万トンになる見通しである。主因は、中国、インド、メキシコおよびアメリカ合衆国における地金増産である。その一方、ヨーロッパと韓国の鉛地金生産は減少見込みである。

 

3)鉛需給バランス

  • 各国から得た直近の情報から推計すると、2025年の世界の鉛地金需給バランスは、8.2万トン地金生産が地金消費を上回る見通しである。

 

2 2025年の世界の亜鉛需給予測

1)亜鉛消費

  • 2025年の世界の亜鉛地金消費量は、前年比で1%増の1,364万トンになる見通しである。
  • 中国での亜鉛地金消費量は、2024年は前年比1.9%減となったものの、2025年は2024年に対して0.9%増になると予想している。
  • 2025年のその他の国、地域における亜鉛消費量は、ブラジル、インド、トルコで増となるものの韓国では減少見込みである。
  • 本年は貿易政策の大きな変化による負の影響が不安視されているが、その要因は前記予測には入れていない。

 

2)亜鉛生産

  • 2025年の世界の亜鉛精鉱生産量は、前年比で4.3%増の1,243万トンになる見通しである。2024年までの3年間に予想を上回る亜鉛鉱山の閉山や減産があったものの、2025年は反転するだろう。2025年の増産は、キプシ鉱山が新規に操業を開始するDRコンゴに加え、オーストラリア、中国、メキシコでの増産が主因となる。ペルーでもアンタミナ鉱山の増産が予定されていることが更なる増産要因となる。
  • ヨーロッパの亜鉛精鉱生産量は、2024年は前年比12.2%減となったが、2025年は2024年比で18.3%増となる見通しである。これは、ボスニア・ヘルツェゴビナでヴァーレ社が新たに鉱山操業を開始する他、ロシアのオゼルノエ鉱山が2024年9月に試験操業を開始したため2025年通期での増産要因となる。さらに、アイルランドのタラ鉱山の再開も増産に寄与する。
  • その反面、アメリカ合衆国においてはテック・リソーシズ社のレッドドッグ鉱山の減産が見込まれている。
  • 上記より推計すると、2025年の亜鉛地金生産量は、鉱山生産増により2024年比で1.8%増の1,373万トンになる見通しである。
  • 中国の2025年の亜鉛地金生産量は、2024年に3.4%減であったものの、今年は前年比3.8%増となる見込みである。また、ノルウェーでもボリデン社のオッダ製錬所が年産15万トン体制への増産起業を終えたことから増産となる。
  • しかしながら、イタリアと日本における亜鉛地金生産量は、それぞれグレンコア社のポルトベスメ製錬所の操業停止、東邦亜鉛(株)の安中製錬所の操業停止により減産となる。韓国でも石浦製錬所が最短でも2か月ほど操業を中断するため減産となる見込みである。

 

3)亜鉛需給バランス

  • 2025年の世界の亜鉛地金需給バランスは、9.3万トン地金生産が地金消費を上回る見通しである。

 

3 その他

プレスリリースの詳細については、ウェブサイトwww.ilzsg.org にアクセスするか事務局宛てにお問い合わせください。

 

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国際ニッケル研究会(INSG)2025年4月プレスリリース

2025-05-08

国際ニッケル研究会(INSG)2025年4月プレスリリース

2025年5月7日
日本鉱業協会 企画調査部

2025年の春季国際ニッケル研究会(INSG)総会は、4月22日及び23日にポルトガル共和国のリスボンで開催され、加盟国の政府や業界、国際機関などの関係者が参加した。4月24日付けで発表されたプレスリリースは次のとおりである。

1 2025年の世界のニッケル市場

現在、世界経済は貿易をはじめとする各国の政策の変化に直⾯しており、原材料市場の不確実性を⾼める一因となるだろう。
インドネシアでは、採掘許可証(RKAB)発行の遅れによりニッケル鉱石需給が逼迫した。同国の新しい採掘権制度(ロイヤルティ)が与える影響についてはまだ十分に解析されていないものの、2025年においてもNPI(ニッケル銑鉄)やHPAL(高圧酸化浸出プロセス)によるMHP(ニッケル・コバルト混合水酸化物)、NPIの純度を上げて精製したニッケルマット、ニッケル地金、硫酸ニッケルなど、様々な種類のニッケル地金や中間物が引き続き増産されることが見込まれる。

中国では、NPIの生産量は減少するものの、ニッケル地金と硫酸ニッケルの生産量は増加するため、中国全体としてはニッケル生産量は増加することが見込まれる。

その他の地域では、採算割れにより多くの鉱山・製錬所が休止や減産しているか、または将来的に休止・減産を検討する事態に追い込まれている。

2025年のステンレス鋼産業についてはさらなる成長を見込んでいる。一方、電気自動車(EV)バッテリー向け需要については、ニッケルを使用しないリン酸鉄リチウムとの競合やPHEV(プラグインハイブリッド車)の販売拡大などにより、消費量は予想を下回る伸びとなっている。しかしながら、世界各地での新たな三元系正極材前駆体(pCAM)プロジェクトがニッケル需要を増加させることが見込まれる。

世界の新産ニッケル生産量は、2023年は336.3万トン、2024年は352.6万トンで、2025年は373.5万トンに増加すると予測した。ただし、予定外の操業中止等の事態は含まれていない。

世界の新産ニッケル消費量は、2023年は319.3万トン、2024年は334.7万トンで、2025年は353.7万トンに増加すると予測した。

したがって、2023年は17.0万トン生産が消費を上回り、2024年も17.9万トン、2025年も19.8万トン生産が消費を上回る見込みである。

 

2 統計委員会

統計委員会では、一連の発表と議論を通じて様々な知見を得た。

ベルギーに本部を置く世界ステンレス協会(旧ISSF、国際ステンレス鋼協会)の事務局長であるティム・コリンズ氏は、「世界ステンレス協会の活動とステンレス鋼の今後の需要」についてプレゼンテーションを行った。

ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス社(イギリス)のニッケル・コバルト担当主席アナリストのホルヘ・ウズカテギ氏は、「リチウムイオン電池市場がニッケル市場の将来を左右する」というテーマで講演を行った。

 

3 産業関係者討議(IAP)

世界のニッケル生産、消費、リサイクル業界の代表者で構成される産業関係者討議(IAP)においても、貴重な情報が提供された。

ヴァーレ・カナダ社の市場・価格分析専門員であるクリスティ・ゲラート氏は、「ヴァーレ・ベースメタルズのニッケル市場最新動向」についてプレゼンテーションを行った。

クロニメット・フェロレグ社(ドイツ)のスクラップの受託精製事業部のマネージャーであるフランク・ヴェカーレ⽒は、「ステンレス鋼スクラップ市場の最新動向」について講演を行った。

ニッケル・インスティテュートの公共政策・サステナビリティ担当理事であるマーク・ミストリ博士は、「ニッケルの責任ある供給とニッケル産業の持続可能な発展の方法」について講演を行った。

 

4 環境経済委員会

環境経済委員会では、ニッケルの持続可能な生産をテーマとして議論が行われた。

中国有色金属工業協会(CNIA)のニッケル・コバルト部門(NCB)副事務局長であるマァン・バイ氏は、「NCBの運営と中国のニッケル市場の発展」について説明を行った。

パリ平和フォーラムの環境及びエネルギー転換技術用鉱物(トランジション・ミネラルズ)プログラム責任者兼責任あるエネルギー転換技術用鉱物世界評議会事務局のソランジュ・ハーファム氏は、「変化する世界における外交の再考」について概要を説明した。

 

5 合同セミナー

国際ニッケル研究会、国際鉛亜鉛研究会、国際銅研究会の合同セミナー「ベースメタル貿易フローに与える政策の影響」を2025年4月24日に開催した。

6 INSGの次回総会日程

2025年10月6日に開催予定。

講演者のプレゼンテーションは、INSG のウェブサイトに掲載する。詳細については、事務局まで問い合わせいただくか、ウェブサイトwww.insg.org にアクセスしてください。

 

以上

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