9月, 2024年
国際銅研究会(ICSG)2024年9月総会報告(プレスリリース)
国際銅研究会(ICSG)2024年9月総会報告
2024年9月27日
日本鉱業協会 企画調査部
2024年の秋季国際銅研究会(ICSG)総会は、9月24日、25日(現地時間)にポルトガルのリスボンにて行われ、加盟国政府代表及び業界の代表者が会議に参加した。日本からは政府代表が参加した。9月26日付けでプレス発表された世界の銅需給見通しは次の通りである。
1.2024年と2025年の世界の銅需給予測(添付 世界の銅需給総括表参照)
1)銅鉱石生産
世界の銅鉱石生産量は、対前年比で、2024年は1.7%、2025年は3.5%、それぞれ増産と予測される。
今回の予測では、2024年の増加率は2023年の2.0%から下回る。新規プロジェクトの立ち上げ・既存鉱山の拡張はあったものの、ファースト・クアンタム社の年産33万トンのコブレ・パナマ鉱山閉鎖による減産分を相殺できなかったことが要因。
2024年暦年上半期での銅鉱石生産量は、グラスベルグ鉱山、エスコンディーダ鉱山の減産からの回復、テンケ・フングルメ鉱山、ケブラダブランカ2鉱山の拡張により4.5%増加した。
2025年には、コンゴ民主共和国のカモア・カクラ鉱山と、モンゴルで坑内掘りに移行したオユ・トルゴイ鉱山の増産、ロシアのマルミシュコエ鉱山の操業開始を主な要因として、3.5%の増産が予想される。また、中小鉱山の操業開始と拡張も鉱石増にわずかながら寄与する。
2)銅地金生産
世界全体の銅地金生産量は、対前年比で 2024年に4.2%、2025年に1.6%それぞれ増加と予測される。
2024年の銅地金生産量は、チリ、日本、インド、インドネシア、米国を含む主要生産国で、2023年中の定修や、操業不調が解消されて増産になる見込み。
同時に、コンゴ民主共和国(SX-EW)と中国(電解)における製錬所の新設・増設による増産と、スクラップ由来の銅の更なる増産も見込まれる。
2025年の増加率は、2024年より低くなると予測される。中国での電解処理能力の更なる増強とインドネシアとインドにおける新規の製錬所の立ち上げが増産に寄与するものの、鉱石由来の生産量の増加は銅精鉱の供給制約があり、小幅な増加にとどまると予想される。しかし、SX-EW由来の生産量は2.5%増産、二次原料由来の生産量は、処理能力の増強により6.0%増産すると予想される。
3)銅地金消費
世界の銅地金見掛消費量は、対前年比で、2024年に約 2.2%、2025年に約 2.7%の増加と予測される。
今回の予測での世界全体の増加率は、前回の2024年4月の予測とほぼ同じであり、EUを中心とする多くの国で下方修正されたが、その他の国々の上方修正により相殺された。
中国の消費量は2024年に約2.0%、2025年には1.8%増加すると予想される。
中国を除く世界の消費量は、2023年に3.0%減少した後、2024年に2.4%、2025年に3.7%の増加と予想される。これは主にインドとその他多くの国々における銅加工設備の増強によるものである。
銅は経済活動、特に現代の技術社会において不可欠である。加えて、主要国におけるインフラの拡充と、クリーンエネルギーと電気自動車の普及という世界的トレンドが、長期にわたる銅需要増加要因となるだろう。
4)銅地金需給バランス
世界の銅地金需給予測は、2024年には約46万9千トン、2025年には約19万4千トン生産が消費を上回る見込み。
ICSG は、グローバル市場のバランスは様々な需給要因により変化するものであると認識している。そのため、予見できない要因により、実際の需給が ICSG の予測から逸脱することは起こりうる。
ICSG は、グローバルな市場需給予測の際に、中国の在庫(国家備蓄、生産者、消費者、貿易業者、保税区域)の増減は考慮に入れていない。これらの在庫は、在庫積み増しや、放出によっては世界の需給を大きく変える要因である。なお、中国の見掛け消費量は(生産+輸入−輸出+/+SHFE 在庫増減)によって算出している。
ICSGは、2024年の需給バランス予測について、2024年4月(前回予測)の16万2千トンの生産過剰から、今回予測の46万9千トンの生産過剰へ修正しました。2025年の需給については約19万4千トン生産が消費を上回る見込み。
2. ICSGの次回総会日程
2025年4月にポルトガル リスボンにて開催予定。
地金需給予測
以上
>> 印刷はこちら(PDF)
国際ニッケル研究会(INSG)2024年9月総会報告(プレスリリース)
国際ニッケル研究会(INSG)2024年9月総会報告
2024年9月25日
日本鉱業協会企画調査部
2024年の秋季国際ニッケル研究会(INSG)総会は、9月23日及び24日にポルトガルのリスボンで開催され、加盟国の政府や業界、国際機関などの関係者が参加した。9月24日付けで発表されたプレスリリースは次のとおりである。
1 2024年及び2025年の世界のニッケル市場
ニッケル地金生産については、インドネシアでは2024年及び2025年においてもNPI(ニッケル・ピッグ・アイアン)やHPALプロジェクト(高圧酸化浸出プロセス)のMHP(ニッケル・コバルト混合水酸化物)、NPIの純度を上げて精製したニッケルマット、ニッケル地金、硫酸ニッケルなど、様々な種類のニッケル製品が引き続き増産されると予想される。中国では、NPIの生産量は減少するものの、ニッケル地金と硫酸ニッケルの生産量は増加するため、中国全体としては増加することが見込まれる。
その他の地域では、採算性の問題から多くの鉱山・製錬所が休止や減産しているか、または将来的に休止・減産を検討する事態に追い込まれている。
世界ステンレス協会(旧ISSF、国際ステンレス鋼協会)の発表によると、2024年1~3月のステンレス鋼の生産量は、2023年1~3月比5.5%増の1,460万トンであった。
2024年及び2025年のニッケル需要については、中国やインドネシアにおいてステンレス鋼向けの需要のさらなる増加が予測される。一方、電気自動車(EV)バッテリー向け需要については、ニッケルを使用しないリン酸鉄リチウムとの競合やPHEV(プラグインハイブリッド車)の販売拡大などにより、予想を下回る伸びとなっている。しかしながら、世界各地の新たな三元系正極材前駆体(pCAM)プロジェクトが早期に生産を開始する可能性が高く、ニッケル需要の増加要因となることが見込まれる。
世界の新産ニッケル生産量は、2023年は336.0万トンで、2024年は351.6万トン、2025年は364.9万トンに増加すると予測した。ただし、生産中止等の事態は含まれていない。
世界の新産ニッケル消費量は、2023 年は319.3 万トンで、2024 年は334.6 万トン、2025 年は351.4 万トンに増加すると予測した。
したがって、2023 年は16.7 万トン生産が消費を上回り、2024 年も17.0 万トン、2025 年も13.5 万トン生産が消費を上回る見込みである。
2 統計委員会
統計委員会では、一連の発表と議論を通じて、統計に関する建設的な意見を収集した。
インドネシアニッケル鉱業協会(APNI)の事務局長であるメイディ・カトリン・レンキー氏は、「インドネシアのニッケル市場に関する見通し」を発表した。
CRU(英)のステンレス鋼原料部長のパノス・コツェラス氏は、「従来型のビジネスではないステンレス鋼のバリューチェーン」について説明を行った。
3 産業関係者討議(IAP)
世界のニッケル生産、消費、リサイクル業界の代表者で構成される産業関係者討議(IAP)においても、貴重な情報が提供された。
テラフェーム(フィンランド)のCCO(最高商務責任者)であるヤンネ・パロサーリ氏は、「テラフェーム社の最新動向」について概要を説明した。
FPX ニッケル(カナダ)の社長兼CEO(最高経営責任者)兼であるマーティン・テュレンヌ氏は、カナダ産の低炭素ニッケルとなる「バプティスト・ニッケルプロジェクト」についてプレゼンテーションを行った。
鉄鋼・金属市場調査会社SMR(オーストリア/ドイツ)の原料担当チーフアナリストのロバート・メスマー氏は、「ニッケル関連の特殊鋼及び超合金」について説明を行った。
4 環境経済委員会
環境経済委員会では、ニッケルの持続可能な生産をテーマとして議論が行われた。
ニッケル・インスティテュートの市場調査担当部長であるパルル・チャブラ氏は、「クリーンエネルギー移行におけるニッケルの役割」について説明を行った。
5 合同セミナー
国際ニッケル研究会、国際鉛亜鉛研究会、国際銅研究会の合同セミナー「重要鉱物に関する取組みと戦略」を2024 年9 月25 日に開催する。
6 INSGの次回総会日程
2025 年4 月に開催予定。
講演者のプレゼンテーションは、INSG のウェブサイトに掲載する。詳細については、事務局まで問い合わせいただくか、ウェブサイトwww.insg.org にアクセスしてください。
以上
>> 印刷はこちら(PDF)
最近のコメント