国際ニッケル研究会(INSG)2023年10月総会報告(プレスリリース)

2023-10-05

国際ニッケル研究会(INSG)2023 年10月総会報告

2023 年10 月5 日
日本鉱業協会企画調査部

2023年の秋季国際ニッケル研究会(INSG)総会は、10月2日及び3日にポルトガルのリスボンで開催され、加盟国の政府や業界、国際機関などの関係者が参加した。10月3日付けで発表されたプレスリリースは次のとおりである。

 

12023年及び2024年の世界のニッケル市場

2023年初頭の世界経済は中国のゼロコロナ政策終了やエネルギー価格の低下によりは好調な兆しを見せたものの、その後はインフレ対策のためのアメリカ合衆国他による金融引締めと金利上昇が悪影響を及ぼした。

国際ステンレス鋼協会(旧ISSF)の発表によると、2023年1~6月のステンレス鋼の生産量は、2022年1~6月比0.9%減の2,670万トンであった。

2023年後半はステンレス鋼向けの需要が回復し、2024年においても電気自動車(EV)バッテリー向け需要が引き続き増加することが見込まれる。

インドネシアでは、NPI(ニッケル・ピッグ・アイアン)の生産が引き続き増加すると予想される。また、MHP(ニッケル・コバルト混合水酸化物)を生産する目的でHPALプロジェクト(高圧酸化浸出プロセス)の新設やプロセス変更が進められており、NPIの生産の一部はニッケルマットに切り替わることが見込まれる。中国のNPI生産量は2024年に減少すると思われるが、ニッケル地金と硫酸ニッケルの生産量は増加することが予想される。
世界の新産ニッケル生産量は、2022年は306.0万トンで、2023年は341.7万トン、2024年は371.3万トンに増加すると予測した。ただし、生産中止等の事態は含まれていない。

世界の新産ニッケル消費量は、2022年は295.7万トンで、2023年は319.5万トン、2024年は347.4万トンに増加すると予測した。

したがって、2022年は10.4万トン生産が消費を上回り、2023年も22.3万トン、2024年も23.9万トン生産が消費を上回る見込みである。歴史的に見ると、ニッケルの需給はLMEで取引されるクラスIニッケル(いわゆる地金類)の生産量に由来していたが、2023年及び2024年はクラスⅡニッケル(フェロニッケルその他の化合物)や硫酸ニッケルを主としたニッケル化合物の生産量に起因した需給バランスとなる。

2 統計委員会

統計委員会では、一連の発表と議論を通じて、統計に関するさまざまな意見を収集した。

インドネシアニッケル鉱業協会(APNI)の事務局長であるメイディ・カトリン・レンキー氏は、「インドネシアのニッケル市場」に関する現状を発表した。

ベルギーに本部を置く国際ステンレス鋼協会の経済・統計・製品担当ディレクターのカイ・ハーセンクレバー氏は、「ステンレス鋼市場の見通し」についてプレゼンテーションを行った。

3 産業関係者討議(IAP)

世界のニッケル生産、消費、リサイクル業界の代表者で構成される産業関係者討議(IAP)においても、貴重な情報が提供された。

カナダ・ニッケル社(加)のCEO兼取締役であるマーク・セルビー氏は、「ティミンズ~新しいニッケル産地~有望な次世代のニッケル大規模鉱床」についてプレゼンテーションを行った。

ウッド・マッケンジー社(英)のニッケル市場担当部長のショーン・マルショー氏は、「最近の国際ニッケル市場概要」についてプレゼンテーションを行った。

ロー・モーション社(英)の調査担当部長であるイオラ・ヒューズ氏は、「世界のEV市場の最新動向と展望」について説明を行った。

4 環境経済委員会

環境経済委員会では、ニッケルに関する経済的な問題や動向、環境、健康、安全に関する規制の変更など、幅広いテーマの議論が行われた。

ニッケル・インスティテュートの市場調査担当部長であるパルル・チャブラ氏は、「クリーンエネルギー開発におけるニッケル利用」について説明を行った。

経済協力開発機構(OECD)の金融企業局責任ある企業行動センターの鉱物・抽出物担当政策アナリストであるツェツィーリエ・ル・ガリッチ氏は、「責任ある鉱物サプライチェーンのためのOECDデュー・デリジェンス・ガイダンス」について説明を行った。

5 合同研究会セミナー

国際ニッケル研究会、国際鉛亜鉛研究会、国際銅研究会の合同セミナー「将来の金属需要に対するリサイクルの役割」を2023年10月4日午後に開催する。

6 INSGの次回総会日程

2024年4月に開催予定。

講演者が発表したプレゼンテーションは、INSGのウェブサイトに掲載する。詳細については、事務局まで問い合わせいただくか、ウェブサイトwww.insg.orgにアクセスしてください。

以上

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