国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)2025年10月プレスリリース 
2025-10-15
国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)2025年10月プレスリリース
2025年10月14日
日本鉱業協会 企画調査部
2025年の秋季国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)総会は10月9日から10日にかけてポルトガルリスボンにて開催された。
需給予測
1 鉛概況 2025年および2026年
1)鉛消費
- 2025年の世界の精製鉛需要は8%増加して1,325万トンに達すると予測されている。2026年は0.9%増の1,337万トンに達する見込み。
- ヨーロッパの需要は2024年に7%減少した後、2025年には1.8%増加すると予想されている。これは主に、チェコ共和国、ドイツ、ポーランド、英国での見かけの使用量の増加によるもので、フィンランド、イタリア、スペインでの減少を相殺して余りあるものとなる。
- 米国では、2024年に鉛バッテリーの輸入が大幅に増加したため、見かけの需要は4%減少した。しかし、2025年には、国内バッテリー生産の増加が見込まれることから、使用量は6.6%回復すると予想されている。
- 今年はブラジル、フィリピン、トルコ、ベトナムでも使用量が増加すると予測されているが、インド、メキシコ、タイでは減少すると予測されている
- 中国では、政府の下取り政策に支えられ、今年上半期に自動車と電動自転車の生産が大幅に増加した。しかし、鉛蓄電池の純輸出量は同時期に減少したため、2025年には鉛需要の増加は9%と予想されている。
- 2026年には、ヨーロッパ、ベトナム、米国で需要が引き続き増加すると予測される一方、中国では7%減少する見込み。
2)鉛供給
- 世界の鉛鉱山供給量は、2025年は7%増の457万トン、2026年には2.2%増の467万トンに達すると予測されている。中国の生産量は2025年に2.8%、2026年に2.5%増加すると予想されている。
- ヨーロッパの鉛鉱山の生産量は、ボスニア・ヘルツェゴビナのヴァレス鉱山の生産量増加、2024年9月のロシア連邦のオゼルノエ鉱山の操業開始、そしてその翌月のアイルランドのボリデン社タラ鉱山の操業再開が本年の増加に寄与している。中国とメキシコでも生産量増加が予想されているが、オーストラリア、カザフスタン、米国では減少が予想されている。
- 2026年の世界供給の増加予測は、主に欧州と中国が寄与し、加えてオーストラリアと米国両国における生産の回復が要因。
- 世界の精製鉛の供給量は、2025年には2%増の1,334万トン、2026年には1%増の1,347万トンになると予想されている。
- 2025年には、カナダ、ドイツ、インド、メキシコ、スウェーデンとブラジルでの増加が見込まれる。ブラジルでは最近新たな二次製錬が稼働を開始した。しかし、これらの増加は、カザフスタン、英国、米国での削減によって部分的に相殺されることになる。
- 2026年には、ブラジルとインドで地金供給が引き続き増加し、カザフスタンでは回復するが、中国とイギリスでは減少する。
3)世界の鉛地金需給
- ILZSGは、加盟国から最近受け取ったすべての情報を考慮した結果、2025年には世界の鉛地金の供給が需要を91,000トン上回ると予想している。2026年には若干余剰が増え、102,000トンの余剰を見込んでいる。
2 亜鉛概況 2025年および2026年
1)亜鉛消費
- 亜鉛地金の世界需要は2025年に1%増加して1,371万トンに達し、2026年には1%増加し1,386万トンに達すると予想される。
- 中国では、今年の使用量は3%増加するものの、2026年にはわずか0.1%しか増加しないと予想されている。中国の自動車生産は2025年上半期に11.4%増加したが、不動産部門への投資は低迷したままとなっている。
- 過去3年間減少していた欧州の需要は、2025年には7%増加すると予測されている。これは主に、フランス、ドイツ、ノルウェー、ポーランドにおける見かけの需要量の増加によるもので、イタリアとロシア連邦における減少によって部分的に相殺される見込み。最近のデータによると、EUにおける建設分野と産業分野の活動はここ数ヶ月でわずかに改善している。
- その他の地域では、インド、⽇本、サウジアラビア、タイ、ベトナムでは亜鉛の需要が増加する一方、ブラジルと韓国では減少すると予測されている。
- 2026年の亜鉛の使用量はヨーロッパ、ブラジル、インド、米国で増加、韓国では引き続き減少と予想されている。
2)亜鉛供給
- 世界の亜鉛鉱山生産量は、2023年と2024年にそれぞれ2%と1%減少した後、2025年は4.6%増加し1,251万トンに達すると予測されている。これは中国を除く地域での5%の力強い増加が寄与するもの。2026年には、さらに2.4%増加して1,280万トンに達すると予想されている。
- 欧州の生産量は、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アイルランド、ポルトガル、ロシア連邦、スウェーデンの生産量増加の恩恵を受け、今年までに大幅に増加すると予測されている。中国、南アフリカ、ペルーでも増産が見込まれ、ペルーでは主にアンタミナ鉱山の生産量増とイスカイクルス鉱山の操業再開が生産増に寄与することが見込まれている。コンゴ民主共和国では、2024年6月に稼働開始したキプシ鉱山で増産となる見込み。
- これらの増加は、米国での大幅な減少によって部分的に相殺される見込みであり、テック・リソーシズは、2025年にレッドドッグ事業の生産量が減少すると予想している。
- 2026年には、主にポルトガルのアルジュストレル製錬所の再開が間近に迫っていることから、欧州の生産量は引き続き増加すると予想される。また、オーストラリア、ブラジル、コンゴ民主共和国、そして大規模なファオシャオユン鉱山がまもなく商業生産を開始する予定である中国での増産が見込まれている。しかし、ペルーではアンタミナ鉱山の減産により、生産量の減少が予想されている。
- ILZSGは、世界の亜鉛地金生産量が7%増加して1,380万トンになると予想している。2026年には、世界の生産量はさらに2.4%増加して1,413万トンに達すると予測している。
- 中国では、主に最近の大規模な新設備稼働の結果として、2025年には2%の成長が見込まれている。ノルウェーでも生産量の増加が見込まれており、ボリデンは3月にオッダ製錬所の年間生産量15万トンの拡張を完了した。
- しかし、イタリアと⽇本では、それぞれグレンコア社のポルトヴェスメ二次製錬所と東邦亜鉛の安中工場の閉鎖により、生産量が減少すると予想されている。またブラジル、カナダ、メキシコ、韓国も減産が予想されている。韓国は石浦製錬所の操業が一時停止した影響である。
- 2026年は、世界の生産量は亜鉛鉱石の供給増加の恩恵を受けると予想され、ブラジル、カナダ、ノルウェー、中国での増産が見込まれる。中国ではファオシャオユン鉱山と垂直統合された年間50万トンの生産能力を持つ製錬所が商業生産を開始する見込み。ロシア連邦においても、新規のヴェルフニー・ウファレイ製錬所が近々稼働開始予定であり、生産量の増加に影響すると予想される。
3)世界の亜鉛地金バランス
- 世界市場のバランスに関しては、ILZSGは2025年には亜鉛地金の供給過剰が85,000トンと予測した。2026年には、さらに大きな271,000トンの供給過剰が見込まれている。
このプレスリリースに関する詳しい情報は、ILZSGのウェブサイト( www.ilzsg.org )をご覧いただくか、事務局にお問い合わせ下さい。
以上
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