国際ニッケル研究会(INSG)2025年4月プレスリリース New

2025-05-08

国際ニッケル研究会(INSG)2025年4月プレスリリース

2025年5月7日
日本鉱業協会 企画調査部

2025年の春季国際ニッケル研究会(INSG)総会は、4月22日及び23日にポルトガル共和国のリスボンで開催され、加盟国の政府や業界、国際機関などの関係者が参加した。4月24日付けで発表されたプレスリリースは次のとおりである。

1 2025年の世界のニッケル市場

現在、世界経済は貿易をはじめとする各国の政策の変化に直⾯しており、原材料市場の不確実性を⾼める一因となるだろう。
インドネシアでは、採掘許可証(RKAB)発行の遅れによりニッケル鉱石需給が逼迫した。同国の新しい採掘権制度(ロイヤルティ)が与える影響についてはまだ十分に解析されていないものの、2025年においてもNPI(ニッケル銑鉄)やHPAL(高圧酸化浸出プロセス)によるMHP(ニッケル・コバルト混合水酸化物)、NPIの純度を上げて精製したニッケルマット、ニッケル地金、硫酸ニッケルなど、様々な種類のニッケル地金や中間物が引き続き増産されることが見込まれる。

中国では、NPIの生産量は減少するものの、ニッケル地金と硫酸ニッケルの生産量は増加するため、中国全体としてはニッケル生産量は増加することが見込まれる。

その他の地域では、採算割れにより多くの鉱山・製錬所が休止や減産しているか、または将来的に休止・減産を検討する事態に追い込まれている。

2025年のステンレス鋼産業についてはさらなる成長を見込んでいる。一方、電気自動車(EV)バッテリー向け需要については、ニッケルを使用しないリン酸鉄リチウムとの競合やPHEV(プラグインハイブリッド車)の販売拡大などにより、消費量は予想を下回る伸びとなっている。しかしながら、世界各地での新たな三元系正極材前駆体(pCAM)プロジェクトがニッケル需要を増加させることが見込まれる。

世界の新産ニッケル生産量は、2023年は336.3万トン、2024年は352.6万トンで、2025年は373.5万トンに増加すると予測した。ただし、予定外の操業中止等の事態は含まれていない。

世界の新産ニッケル消費量は、2023年は319.3万トン、2024年は334.7万トンで、2025年は353.7万トンに増加すると予測した。

したがって、2023年は17.0万トン生産が消費を上回り、2024年も17.9万トン、2025年も19.8万トン生産が消費を上回る見込みである。

 

2 統計委員会

統計委員会では、一連の発表と議論を通じて様々な知見を得た。

ベルギーに本部を置く世界ステンレス協会(旧ISSF、国際ステンレス鋼協会)の事務局長であるティム・コリンズ氏は、「世界ステンレス協会の活動とステンレス鋼の今後の需要」についてプレゼンテーションを行った。

ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス社(イギリス)のニッケル・コバルト担当主席アナリストのホルヘ・ウズカテギ氏は、「リチウムイオン電池市場がニッケル市場の将来を左右する」というテーマで講演を行った。

 

3 産業関係者討議(IAP)

世界のニッケル生産、消費、リサイクル業界の代表者で構成される産業関係者討議(IAP)においても、貴重な情報が提供された。

ヴァーレ・カナダ社の市場・価格分析専門員であるクリスティ・ゲラート氏は、「ヴァーレ・ベースメタルズのニッケル市場最新動向」についてプレゼンテーションを行った。

クロニメット・フェロレグ社(ドイツ)のスクラップの受託精製事業部のマネージャーであるフランク・ヴェカーレ⽒は、「ステンレス鋼スクラップ市場の最新動向」について講演を行った。

ニッケル・インスティテュートの公共政策・サステナビリティ担当理事であるマーク・ミストリ博士は、「ニッケルの責任ある供給とニッケル産業の持続可能な発展の方法」について講演を行った。

 

4 環境経済委員会

環境経済委員会では、ニッケルの持続可能な生産をテーマとして議論が行われた。

中国有色金属工業協会(CNIA)のニッケル・コバルト部門(NCB)副事務局長であるマァン・バイ氏は、「NCBの運営と中国のニッケル市場の発展」について説明を行った。

パリ平和フォーラムの環境及びエネルギー転換技術用鉱物(トランジション・ミネラルズ)プログラム責任者兼責任あるエネルギー転換技術用鉱物世界評議会事務局のソランジュ・ハーファム氏は、「変化する世界における外交の再考」について概要を説明した。

 

5 合同セミナー

国際ニッケル研究会、国際鉛亜鉛研究会、国際銅研究会の合同セミナー「ベースメタル貿易フローに与える政策の影響」を2025年4月24日に開催した。

6 INSGの次回総会日程

2025年10月6日に開催予定。

講演者のプレゼンテーションは、INSG のウェブサイトに掲載する。詳細については、事務局まで問い合わせいただくか、ウェブサイトwww.insg.org にアクセスしてください。

 

以上

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