国際ニッケル研究会(INSG)2024年4月総会報告(プレスリリース) New

2024-04-26

国際ニッケル研究会(INSG)2024年4月総会報告

2024年4月26日
日本鉱業協会企画調査部

2024年の春季国際ニッケル研究会(INSG)総会は、4月22日及び23日にポルトガルのリスボンで開催され、加盟国の政府や業界、国際機関などの関係者が参加した。4月24日付けで発表されたプレスリリースは次のとおりである。

1 2023年及び2024年の世界のニッケル市場

2024年の世界経済は前年に引き続き成長し、世界のインフレ率は徐々に低下することが見込まれる。

世界ステンレス協会(旧ISSF、国際ステンレス鋼協会)の発表によると、2023年のステンレス鋼の生産量は、2022年比4.6%増の5,840万トンであった。

2024年については、中国やインドネシアにおいてステンレス鋼向けの需要のさらなる増加が予測される。一方、電気自動車(EV)バッテリー向け需要については、中国の新エネルギー自動車(NEV)に対する購入補助金廃止やリン酸鉄リチウムとの競合、PHEV(プラグインハイブリッド車)の販売拡大などにより、予想を下回る伸びとなっている。

インドネシアでは、NPI(ニッケル・ピッグ・アイアン)やHPALプロジェクト(高圧酸化浸出プロセス)のMHP(ニッケル・コバルト混合水酸化物)、NPIから転換されるニッケルマット、ニッケル地金、硫酸ニッケルなど、様々な種類のニッケル製品が引き続き増産されると予想される。中国では、2024年にNPIの生産量は減少する可能性が高いが、ニッケル地金と硫酸ニッケルの生産量は増加し、全体としては増加することが見込まれる。

その他の地域では、採算性の問題から多くの鉱山・製錬所で休止や減産、または将来的に休止・減産を検討する事態に追い込まれている。
世界の新産ニッケル生産量は、2022年は306.0万トン、2023年は335.6万トンで、2024年は355.4万トンに達すると予測した。ただし、生産中止等の事態は含まれていない。

世界の新産ニッケル消費量は、2022年は296.3万トン、2023年は319.3万トンで、2024年は344.5万トンに増加すると予測した。
したがって、2022年は9.8万トン生産が消費を上回り、2023年も16.3万トン、2024年も10.9万トン生産が消費を上回る見込みである。

2 統計委員会

統計委員会では、一連の発表と議論を通じて、統計に関する建設的な意見を収集した。

ベルギーに本部を置く世界ステンレス協会の経済・統計・製品担当ディレクターのカイ・ハーセンクレバー氏は、「ステンレス鋼市場の見通し」についてプレゼンテーションを行った。

SMMインフォメーション&テクノロジー(中国)の上級副社長であるラケット・フー氏は、「中国のニッケル市場の詳細分析」に関する暫定報告を行った。

3 産業関係者討議(IAP)

世界のニッケル生産、消費、リサイクル業界の代表者で構成される産業関係者討議(IAP)においても、貴重な情報が提供された。

ロンドン金属取引所(LME、英)の営業担当部長であるアルベルト・ゾド氏は、「LMEのニッケル取引に関する最新動向」について説明を行った。

ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス(英)のニッケル・コバルト担当主席アナリストのウィリアム・タルボット氏は、「リチウムイオン電池市場の概要とニッケルへの影響」についてプレゼンテーションを行った。

P.J.マーキー・テクノロジー(カナダ)のフィリップ・マーキー氏は、「ニッケルとその他の金属の低炭素生産-潜在的な新技術のアプローチと水素の役割-」に関する説明を行った。

4 環境経済委員会

環境経済委員会では、ニッケルの持続可能な生産をテーマとして議論が行われた。

ニッケル・インスティテュートのH&E公共政策担当部長であるヴェロニク・ストゥーカース博士は、「ニッケルのカーボンフットプリント算定(関連性、要件、方法、調整)」について説明を行った。

安泰科(中国)のシニアアナリストであるウー・シャオラン氏は、「中国のカーボンピークとニュートラル目標におけるニッケルの役割」に関するプレゼンテーションを発表した。

RMGコンサルティング(米)のアントン・ロフ部長は、「2050年の金属需要-鉄鋼、銅、ニッケル-」というテーマで、自社が世界銀行の下で行った業務に関する説明を行った。

ミンバイロ(英)のコンサルタントチームリーダーであるロヒン・シャー氏とシニアLCAアナリストのジョシュア・アームストロング氏は、「ニッケル採掘、製錬/精製、リサイクルからの炭素排出(エネルギー転換の示唆)」に関する予備調査結果について報告を行った。

5 合同セミナー

国際ニッケル研究会、国際鉛亜鉛研究会、国際銅研究会の合同セミナー「ベースメタルの責任ある調達に関する最新動向」を2024年4月24日に開催する。

6 INSGの次回総会日程

2024年9月23日の週に開催予定。

講演者が発表したプレゼンテーションは、INSGのウェブサイトに掲載する。詳細については、事務局まで問い合わせいただくか、ウェブサイトwww.insg.orgにアクセスしてください。

以上

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