ブックタイトル鉱山2020年8・9月号
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鉱山2020年8・9月号
スズ(錫)24000220002018年1月~2020年3月1.スズ価格の推移スズは,国際商品のひとつで英国のLMEと,マレーシアのクアラルンプールが取引の中心であり,両者から日々,取引価格が公表されている。日本では建値等の公表価格はない。2018年1月から2020年3月にかけての世界のスズ価格は,図1のとおりである。スズは,現在,ITやEV(電気自動車)など最先端商品分野における期待需要が大きくないため,価格は長期的に横ばいから低落傾向である。最近2年間においても,相場は$20,000/t内外から$17,000/t付近まで下落した。主要産地における天災や減産,情勢不安の際には,一時的に$22,000/tまで相場は上昇したものの,情勢が落ち着くと相場は下落した。2.世界のスズ需給世界のスズ需給は,2015年から2019年の5年間は,おおむね年間35万t前後であった。(含有量ベース。以下おなじ)この数量は,いわゆるレアメタルの中では,ニッケルの年間250万tレベルに比べると1桁少ないものの,コバルトの年間20万tレベルよりは多い。世界的には,スズ鉱石産出国は偏在しており,中国西南部からインドネシア一帯および,ブラジル西南部からボリビア,ペルー南部を含む一帯が主要生産地である。アフリカでは,コンゴ民主共和国(DRC)からナイジェリア付近にかけての地域がスズ鉱石の生産地である。表1のとおり,最近5年間のスズ鉱石の最大の生産国は中国で,2019年の年間生産量は14.3万tと,世界のスズ鉱石生産の40%を占めた。その次にスズ鉱石生産が多いのは,インドネシアの8.6万t,ミャンマーの3.4万tであった。20世紀中はスズ鉱石最大の生産国であったマレーシアにおける2019年のスズ鉱石年間生産量は4,000tまで2000018000160001400012000100002‐Jan‐1815‐Feb‐1831‐Mar‐1814‐May‐1827‐Jun‐1810‐Aug‐1823‐Sep‐186‐Nov‐1820‐Dec‐1831‐Jan‐1916‐Mar‐1929‐Apr‐1912‐Jun‐1926‐Jul‐198‐Sep‐1922‐Oct‐195‐Dec‐1915‐Jan‐2028‐Feb‐20出典:マレーシアKLTM公表相場図1スズ価格動向($/t)減少した。2019年の世界のスズ地金生産量は,表2のとおり37万tであった。地金生産国も鉱石生産国に準拠していると言ってもよく,トップは中国の18万tで,第2位はインドネシアの8万tである。伝統的なスズ産地のマレーシアでは,鉱山閉山後も製錬設備が稼働し続けているため地金生産量は2.4万tを記録した。その一方,ミャンマー,コンゴ民主共和国ではスズ製錬は行なわれず,両国はもっぱらスズ鉱石の輸出国となっている。世界のスズ地金消費量は,表3のように2019年現在で年間37万tであった。過去5年間におけるスズ地金消費量も,年間36万tから38万tあたりで推移した。スズ消費国は,先進国と工業国が中心であり,中国の消費量は年間17.8万tに達し,世界全体の5割を占めた。以下,アメリカ合衆国3.1万t,日本2.5万t,ドイツ1.8万tと続いている。スズの主要用途先は,図2のとおりである。スズの主要需給国が加盟しているITA(国際スズ協会)の発表によると,2018年の最大の用途は“はんだ”で,その比率は47%である。第2位は,化学用の無機薬品やスズ化合物向けでシェアは18%,第3位はブリキなどを含むスズ鋼板鉱山第787号2020年8・9月-94-