ブックタイトル鉱山2020年8・9月号

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概要

鉱山2020年8・9月号

政府統計によれば,2000年に年間3.35億m 2あった写真フィルムの生産量は,2012年に1.38億m 2まで減少した後,統計対象外となった。フィルムを含む写真感光材向け銀需要量も,2000年代には年間1,000t強を記録していたが2019年は210tであった。写真向けに次ぐ従来型の銀の用途先は酸化銀電池向けの硝酸銀用途で,2019年の需要量は264tであり,2018年の77tから一時的に激増したが背景は不明である。メインの用途となる酸化銀電池の生産量は表6のとおりであり,その生産量は微減傾向にあるので,統計収集事情の変化や一時的な需給バランスの変化などが考えられる。銀は優れた導電性や耐食性に加えて,最近ではナノ粒子レベルの銀粉に抗菌性や防臭性があることが分かり,太陽光パネルのフィルムをはじめ,タッチスクリーン,浄水装置,抗菌力をアピールする洗剤向けなどの用途が少しずつ拡大している。直近では,COVID-19ウィルスに対する抗菌効果があるのではないかとの情報があった。そのため,表5のとおり,展伸材や,その他分野における銀の内需は相対的には安定的に推移している。2019年の銀需要量は,両者合計で年間715tに達し,2015年の623tから15%増加した。なお,宝飾品,資産用の銀需要については,日本には公表されている計数資料がないため不明である。4.日本の銀輸出入表7に日本の銀地金の輸出入量を示す。2019年の銀地金輸入量は1,822t,輸出は4,659tであったが,2015年以来の趨勢を見ると,年間輸入量は,おおむね2,000t内外,輸出量は4,500t前後で推移している。統計には資産用や宝飾品用の銀も含まれているため,他のメタルと比較すると景気動向や産業動向以外の要因も多い。銀地金の輸入先は2015年から2019年にかけて韓国がトップで,しかも輸入量の9割以上を占めている。輸出先は多岐にわたっているが,中国,韓国,台湾,香港向けの合計で約3分の2を占めている。中国の工業用銀需要が旺盛であり,細目を見ると中国向けの銀粉輸出が増加している。5.最近の銀に関するニュース2019年1月から2020年3月にかけて,世界の銀鉱山,需給情勢に関する大きなニュースはなかった。2019年7月11日に,2020年東京オリンピック・パラリンピック開催委員会は,銀メダル用の銀についても金,銅と同様にリサイクル原料で賄えるだけの廃携帯電話や小型家電が集まったことを発表した。リサイクル品回収の呼びかけは「都市鉱山から作る!みんなのメダルプロジェクト」として2017年4月から始まり,銀の回収量は3,500kgであった。各メダル用の地金は国内製錬各社や有名貴金属商の工場で生産される。表6一次電池販売数量(単位:百万個)品目/暦年2015年2016年2017年2018年2019年前年比(%)マンガン電池------アルカリ電池9951,0529981,1301,20220.4酸化銀電池(注)827771850778769-9.6リチウム電池889945989988874-11.6その他------一次電池計2,7122,7682,8372,8962,8440.3出所:経済産業省生産動態統計(旧機械統計)(注)2011年より「酸化銀電池」には「マンガン電池」「その他」が含まれる。鉱山第787号2020年8・9月-78-