ブックタイトル鉱山2020年8・9月号
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鉱山2020年8・9月号
へ約25%上昇したことと比べると,銀相場は,$15.55から$14.25へと8%強の値下がりとなり,伝統的な貴金属でありながら両者は対照的な挙動を示した。2)日本の山元建値日本の山元建値は,週末と祝祭日を除く毎日の発表で,円/kg表示であるものの,国際相場準拠である。直近の月別平均価格と過去5年間の年平均価格は,表1のとおりである。また,図2に日本と海外の銀相場の動きを示した。2019年1月から2020年3月にかけての山元建値月間平均価格は,2019年9月が最高で64,430円/kg,2019年5月が53,040円であった。日足では,2020年2月21日の67,680円が最高値,2020年3月19日の43,400円が最安値であった。この15ヵ月間,ドル円の為替相場に大きな変動がなかったことから,山元建値も国際銀相場の動きと,ほぼ同じ動きであった。2.世界の銀需給と生産1)世界の銀地金需給2019年の世界の銀需給は,世界的な調査会社であるRefinitive社調べによると,表2のとおり実需ベースで739tの供給不足であった。2015年以来,調査統計上は供給不足気味に推移しているので,2019年も2018年以前に比べて大きな変化があったとは判断できない。銀は金と並ぶ貴金属の代表品目であるので,世界的な需要の4割強は宝飾品や資産用であるものの,金の宝飾,資産用比率が8割以上であることと比べると,工業用の需要比率が高いことが特色である。銀は導電性が非常に高いため,重電,弱電部門などすべてのエレクトロニクス製品部門において,スイッチ,コネクター類のめっき目的で使われ,工業用需要部門が最大の用途先である。2019年の需要量は7,700tあまりであったが,2018年の8,000tに比べて減少した。中国の経済成長の鈍化による需要減退が主因であると推測されている。続いて,太陽光発電分野における需要が約2,400tを占めている。太陽光発電は,エコ指向H&H $/lb19.00018.00017.00016.00015.00014.00013.00012.00011.00010.000201520172019年1月2019年3月2019年5月2019年7月2019年9月2019年11月2020年1月2020年3月H&H $/lb建値円/Kg図2ドル及び円の銀価格推移(2015年~2020年3月)円/kg80,00070,00060,00050,00040,000の高まりで全体としては関連機器生産が伸びているものの,銀の用途先である発電用パネルにおける単位あたり銀使用量が減っているため,銀需要量は2018年に比べて減少した。宝飾品需要は安定的に推移し,コインや資産用の需要と合わせた銀需要量は13,500t超に達し,2018年の13,300tより増加した。2019年後半から高まった米中貿易摩擦の激化により,金と合わせて銀を資産として保有する動きが高まったことが背景にあるとされている。国別統計は明らかではないが,専門家の解析によると,インドにおける銀需要は人口増を背景とした婚礼用銀製品の需要増などで確実に増加し,中国と並んで世界の宝飾品用の銀需要を支えているとの論調が多い。2)世界の銀鉱石生産2019年の世界の銀鉱石生産は表3のとおり25,600t(含有量ベース)であった。2015年と比べると約2,700t減,率にして1割弱の減産である。世界最大の銀生産国はメキシコで,2019年の生産量は5,919tであった。続いて,ペルー3,845t,中国3,574tの順である。銀生産国は,伝統的にメキシコからボリビアにかけての中南-73-鉱山第787号2020年8・9月