ブックタイトル鉱山2020年8・9月号

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概要

鉱山2020年8・9月号

押し上げていると論じている。金価格は,2019年のロンドン取引最終日であった12月27日に再び$1,500を超えて$1,511.50となった。2020年に入ると,金価格は,一貫して上昇傾向を示し,新型コロナウィルスによる世界情勢の不安感が高まると,さらに値を上げた。2020年2月19日には$1,600超えの$1,604.20,4月14日には$1,741.90を記録した。この日は,キリスト諸国におけるイースター休暇明けであり,休暇前の4月9日の$1680.65から一気に$60あまり値上がりした。ヨーロッパ諸国を中心にCOVID-19による国ベースでのロックダウンが頻発していた時期であった。その後の金相場は,$1,700台前半から次第に後半へと値上がりした。6月29日には,$1771.60となり,ここ18ヵ月間における最高値となった。月間平均ベースでは,最安値の月は,2019年1月の$1,292,最高値は2020年の$1,732である。また,暦年ベースでは2019年12月に年内最高値である平均価格は$1,476を記録した。値上がり率は,2019年の12ヵ月間で14%,2020年6月までの18ヵ月間では34%に達した。2)日本の山元建値日本における金の円建て価格指標は山元建値であり,ロンドン相場同様に,営業日ベースで毎日発表されている。山元建値の月間平均動向は,表1及び図2のとおりである。為替要因があるため,ミクロ的な価格変化ではロンドン相場と差異が発生するものの,半年単位,年単位での建値推移は,世界の金相場と完全に連動している。山元建値ベースでの2019年1月から2020年6月までの18ヵ月間における最高値は,2020年6月30日の6,158円/g,最安値は2019年1月10日の4,509円/gであった。2.世界の金需給と鉱石生産1)世界の金需給金の世界的な需給は,年間およそ4,500tである。2015年以降,ほとんど変わっていない。金需給の特色は,用途が多岐で,単位あたりの使$/toz円/g1,8001,7001,6001,5001,4001,3001,2001,1001,0002014年平均2016年平均2018年平均2019年2月2019年4月2019年6月2019年8月2019年10月2019年12月2020年2月2020年4月2020年6月$/toz円/g図2金価格の推移(2014年から2020年6月まで)$はロンドン,円は建値6,5006,0005,5005,0004,5004,0003,5003,000用量が微量な製品が多いにもかかわらず,鉱山生産の他にスクラップ産の金が供給の4分の1程度を占めていることである。リサイクルのプロセスに回らずに,再生技術を有する貴金属商や工房における再溶解や打ち直しは統計外であるため,実際の金リサイクルの数量はさらに多く,しかも複雑な流通を経ていると推測している。金の需要は,統計ベースで年間4,000tである。宝飾品と資産用の金需要が約9割を占めているが,工業用の需要も約10%あり,優れた導電性や耐食性を生かしてプリント基板や歯科材料に安定的に使用されている。特に,工業国においては工業用の金需要比率が高い。金の需給バランスは,統計データで見る限りでは供給過剰であるが,個人消費割合が多く,取引形態も複雑多岐であることから実態は不明である。ただし,専門家の独自スキルによる解析や,市中情勢による過不足感などを総合すると,直近において金の不足感はない。2)世界の金鉱石生産世界の金鉱石生産は表3のとおりである。2019年の生産量は3,200t(含有量ベース,以下おなじ)で,2015年の3,200tと比べると横ばいで推移している。2019年の世界最大の金鉱石生産国は中国で,年間生産量は380tであった。中国の金鉱石生産量は10年ほどにわたり年間400t前-63-鉱山第787号2020年8・9月