ブックタイトル鉱山2020年8・9月号

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概要

鉱山2020年8・9月号

しているが,2018年3月以来,同国最大のスターライト・カッパー社(Sterlite Copper)のツーチコリン銅製錬所(会社サイトによる呼称はトゥートゥクディ:Toothukudi)が環境法令抵触等の疑いで当局から操業停止命令を受け,2年あまりにわたって操業を停止しているためである。ドイツの銅生産量も2018年の67万トンが2019年に60万トンに減少したが,同国のアウルビス社の製錬所が2019年11月から操業不調に陥って4万トン超の減産になったことが主因である。SX-EW法による銅地金生産は,表6のとおりである。2019年を含む過去5年間を通してチリとコンゴ民主共和国の2カ国における生産量が突出して多い。2019年実績では,チリ158万トン,コンゴ民主共和国84万トンで合計シェアは63%であった。コンゴ民主共和国の銅鉱床と連続している鉱床がある隣国のザンビアの生産量24万トンを加算すると3カ国の生産量は266万トンでシェアは70%に達する。これらの3カ国においてSX-EW法に適している酸化鉱の銅鉱床が開発され,鉱石生産量が多いことが共通点である。その中で,チリの生産量はやや減少気味であるが,銅鉱床の採掘地点が表層部から徐々に深度部へ移行したため表層部分に多い酸化鉱の生産量が減少していることが理由である。SX-EW法の特色のひとつは,酸化鉱を硫酸浸出にて処理する工程であるが,チリでは国内産の硫酸生産量がSX-EW用の硫酸需要を賄えないためペルー,日本などから硫酸を輸入している。日本の非鉄製錬各社はチリより年間およそ50万トン(Cu含有量ベース)の銅精鉱を輸入しているが,そのうちのJX金属においては,物流効率を上げ輸送用のエネルギー使用量の削減を図るため,チリから日本までの往路は銅精鉱を輸送し,日本からチリまでの復路は硫酸を輸送できる構造を持つ「鉱硫船:こうりゅうせん」を開発し,子会社の日本マリン㈱にて運航している。当該船の外観写真及び図3に鉱硫船の構造を示す。表6 SX-EW銅生産(単位千Cuトン)暦年2015年2016年2017年2018年2019年構成比19/18ヨーロッパ72.375.074.671.548.91.3▲31.7マケドニア2.31.41.00.80.81.6スペイン70.073.673.770.748.11.3▲32.0アフリカ976.6905.6935.51,073.31,095.428.62.1コンゴDRC792.8707.2693.4821.1842.122.02.6ナミビア10.716.415.514.615.70.48.0ザンビア173.2182.0226.6237.6237.66.2アジア215.8247.8270.3316.4309.48.1▲2.2中国44.944.450.055.055.01.4キプロス2.11.71.31.00.7▲27.7イラン13.111.813.013.212.30.3▲7.1カザフスタン12.135.342.539.736.51.0▲8.2ラオス89.378.562.966.360.01.6▲9.6モンゴル15.015.214.614.211.80.3▲17.0ミャンマー39.360.985.8126.9133.23.55.0アメリカ2,604.52,512.92,370.32,339.12,346.661.40.3ボリビア1.82.22.23.33.10.1▲5.5ブラジル3.63.63.63.63.60.1チリ1,778.41,660.31,586.21,575.31,580.241.30.3メキシコ158.4158.4158.4158.4158.44.1ペルー73.173.962.466.366.41.70.2米国588.8614.5557.5532.3534.914.00.5オセアニア39.029.127.630.324.40.6▲19.6オーストラリア39.029.127.630.324.40.6▲19.6世界合計3,908.33,770.43,678.33,830.63,824.7100.0▲0.2(出典)WBMS:World Metal Statistics 2020.7SX-EW銅製錬設備イメージ出展米フローレンス・カッパー社公式サイト鉱硫船外観写真出典日本マリン㈱公式サイト鉱山第787号2020年8・9月-28-