ブックタイトル鉱山2020年8・9月号

ページ
21/214

このページは 鉱山2020年8・9月号 の電子ブックに掲載されている21ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

鉱山2020年8・9月号

指向し,従来タイプの国際商品取引においても環境問題や企業の社会的責任をリードするような組織にしたいとのコメントが付された。しかしながら,この提案に対しては,準備期間の短さに加えて,紛争鉱物管理に関する既存のルールとの重複や,取引実務における認証難と監査費用高などの課題が多くあるとの意見があちこちから寄せられたため,LMEのプランは再度検討され,仮に実施するとしても最短で2023年ごろからの運用開始になる方向に議論が変わったことが10月下旬にメタル・ブルティン誌などで報道された。紛争鉱物問題については,日本においては「金」がもっとも身近な関連メタルであり,米国法令,EU規則などに負うところが多い。いくつかの日本の非鉄各社も英国において貴金属取引を行っているため,LBMA(London Bullion MarketAssociation=ロンドン貴金属市場協会)の規則に従って所定の認証を申請のうえ取得している。表2に2020年1月1日現在の認証取得状況を示した。各種メタルは,鉱山から製錬工程や加工工程を経て最終製品である自動車やパソコン,携帯電話などに使われており,世界規模でのサプライ・チェーン,流通ネットワークを形成している。2019年10月には,このような特色を踏まえて上流から下流産業までのメタル取引を一貫して追跡できるブロック・チェーン構想に関するニュースが流れた。このチェーンは,アントファガスタ,グレンコア,アングロ・アメリカン,タタ製鉄,クロックナー製鉄,ミンスール,デ・ビアスの7社で構成されるとのことであるが,具体的な内容や追跡手法などについての情報開示はなかった。冒頭のLME制度改革案とともに,ESGを採り入れた経営要求,投資適格先選定の要求がさらに高まるなかで,主要各社は,取引の透明性確保を目指しながら,その一方で,新しいタイプのサプライ・チェーンづくりを目指して事業の成長戦略を練っている状況である。2020年3月に金地金住友金属鉱山㈱公式サイトより銀地金東邦亜鉛㈱公式サイトよりは,グレンコア社がコバルトの長期安定顧客確保のために世界バッテリー連盟(WorldEconomic Forum’s Global Battery alliance)に参加したと報じられた。この連盟には,日本の三菱電機やホンダも入っていて,2019年末のメンバー会社数は約70社である。7.鉱業政策と企業活動をめぐるトラブル2019年から2020年3月にかけて起こった各国政府と鉱山製錬事業者間における主要トラブルは以下のとおりであった。大規模な武力衝突や資源ナショナリズムの高揚はなかった。1)ザンビアで,2019年1月1日から銅精鉱輸入に5%の輸入税が課され,4月からは16%の付加価値税に代わる3%から10%程度の売上税の導入も行われた。国内の銅製錬業者は,増税分だけコスト高になってザンビア銅の国際競争力が減退すると主張し,特に輸入税に対して猛反対したが新税制は予定どおり導入さ-19-鉱山第787号2020年8・9月