ブックタイトル鉱山2020年8・9月号

ページ
138/214

このページは 鉱山2020年8・9月号 の電子ブックに掲載されている138ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

鉱山2020年8・9月号

徹底した省エネと再生可能エネルギーの最大限導入を推進し,火力発電の高効率化を進めることで,原子力発電依存度を可能な限り低減させるという従来の基本方針を堅持し,再生可能エネルギーの主力電源化に向けた課題の解決などを推進することとなる。一方,2050年に向けては,パリ協定での温室効果ガス80%削減に見られる脱炭素化への流れの加速化を意識すると,2030年と比較しても不確実性の高い状況下での戦略的対応が求められる。我が国のエネルギー政策は,2度のオイルショックからの石油代替政策,京都議定書の発効を契機とした地球温暖化対策,そして東日本大震災での東京電力福島第一発電所事故を受けた原子力依存度の低減など,状況に応じた適時的な対応が図られてきた。さらに現在は,2050年に向けた長期戦略の検討も不可欠の状況である。この不確実な状況においては,我が国の持つ革新的な技術開発をさらに推進し,不連続な形で世界に先駆けて成果反映と普及を推進することが重要である。エネルギーは国家,経済,社会の礎であり,エネルギー転換,脱炭素化を巡る国際競争のなかで,環境経営の推進や産業界でも企業の環境ブランド価値の創出など,金融面での投資好循環をも実現する意識が求められている。当業界としても,CSR(Corporate SocialResponsibility:企業の社会的責任)やCSV(Creating Shared Value:共有価値創出),そしてSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標(展開))やESG(環境(Environment),社会(Social),ガバナンス(Governance)の頭文字)投資推進の動きを,地球温暖化対策と企業や業界価値の向上につなげるという将来のありたい姿実現に向けて,ポジティブな対応を図ることとしている。電力料金に関しては,電力市場の自由競争促進により電気料金上昇を抑制し,電力の広域融通する仕組みを強化し,非常時の電力の安定供給を確保すべく2015年から段階的に進めている「電力システム改革」が,2020年4月発送電分離(大手電力会社の送配電部門の法的分離)を迎え,その最終段階となる改革が進んだ。2019年度の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会では,総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会が2019年8月に取りまとめた中間整理(第3次)を踏まえ,FIT制度(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の抜本見直し及び再エネの「主力電源化」に向けた更なる環境整備と制度改革等についての見解が12月にまとめられた。託送料金制度改革やFIT制度抜本見直しの本格検討に着手しようとした矢先に襲った9,10月の台風被害や2018年の北海道でのブラックアウト(エリア全域の大規模停電)によって顕在化した電力設備のレジリエンス(強靱性)に関する議論が再燃し,エネルギー政策の方向性にも影響を与えた。経済産業省は,総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会/産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会電力安全小委員会合同電力レジリエンスワーキンググループ「電力レジリエンスワーキンググループ(WG)」を10月に再開。迅速な停電復旧に向けて関係者間の連携などの対策を打ち出す一方,このWGを起点として,災害に強い電力システムの構築と,再生可能エネの主力電源化を見据えた施策の具体化を図り法律案を整備した。その中には,電気事業の新たなライセンスとして配電事業,アグリゲーターの創設,託送制度には,欧州の事例を参考に,収入に上限をかける「レベニューキャップ」を導入する方向で一致。FITに代わるFIP(フィード・イン・プレミアム)制度の創設も含められた。また,政府は2月25日,「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」を閣議決定した。本案は,「エネルギー供給強靭化法案」と呼ばれ,鉱山第787号2020年8・9月-136-