ブックタイトル鉱山2020年8・9月号

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概要

鉱山2020年8・9月号

にJIS法や日本の製錬各社の実施法を採用させることに成功してきた。現在ISO/TC183では,ペナルティー成分(ひ素,ふっ素,水銀,カドミウム等)や銀の湿式分析法等の分析方法の検討を各ワーキンググループ(以下,WG)や各スタディグループ(以下,SG)で行っている。これらの分野については,これまでの精鉱のサンプリング法や買鉱対象成分の分析法と異なり,国内各製錬所の分析方法が統一されておらず,JIS法についても必ずしも整備された状況とはなっていない。そこで,分析部会では国内各製錬所での分析方法等の調査,共同実験を通じた分析法の検証や分析精度の把握を行って国内の統一法を確立し,それをJISや協会法として標準化するとともに,国際標準であるISOにも反映させることを目的とし,継続して活動を行っている。分析部会では2018(平成30)年度から2020(令和2)年度までの計画で経済産業省から助成を受け「銅,鉛及び亜鉛精鉱中の銀,ひ素,カドミウム及びふっ素の定量方法に関する国際標準化」の事業活動を行っている。この活動に関連するWG及びSGはWG13(銀),SG5(ひ素),WG23(カドミウム)及びWG16(ふっ素)で,各グループの活動経緯と2019(平成31)年度の活動状況は以下の通りである。・WG13:銅,亜鉛精鉱中の銀の定量方法(コンビナー:日本)酸分解-原子吸光光度法(以下,AAS法)/ICP発光分析法(以下,ICP-OES法)による銅精鉱及び亜鉛精鉱中の銀の定量方法(以下,湿式分析法)のISO化を検討している。しかし,認証物質(以下,CRM)の認証値や乾式分析値と湿式分析法による分析結果が一致しなかったことから,2019(令和元)年6~7月に未開封のCRM及びWG17の共同実験試料を用いて,乾式分析と湿式分析を同時に実施する国内共同実験を実施した。また,開封後一定期間(3か月)が経過した9~10月に再分析を実施した。その結果,銅精鉱については,同時分析を行えば,乾式分析と湿式分析の結果は一致しており,CRMの認証値とも一致することが確認できた。また,CRM及びWG17の共同実験試料については,一旦開封しても3か月程度では,適正な保管方法を用いれば変質しないことが確認できるとともに,WG17の共同実験試料については未開封の状態であれば変質がないことを再確認することができた。これらのことから,分析値差の原因は分析試料や認証物質の長期的変質にあることが分かった。なお,銀の湿式分析法は,国内では商取引目的の利用が減ってきており,銅精鉱では実施はなく,亜鉛精鉱では一部の製錬所にてのみ使用されている。ただし,2019(令和元)年10月に実施したイギリスやオランダの審判分析所への訪問では,一部の審判分析所で湿式分析法を銀の分析に用いていることが判明した。このことから,世界的にはニーズがある方法であることが分かった。・SG5:銅,鉛,亜鉛精鉱中のひ素の定量方法(コンビナー:日本)精鉱中のひ素については,ISO 13547-1及び13547-2が制定されているが,JIS M 8132(鉱石中のひ素定量方法)の王水-臭素分解法が規定されていないため,JIS法をISO化すべく本SGを立ち上げた。2018(平成30)年に行った国内における共同実験により,臭素分解法は,既存ISOに比べて精度が優れていること,ひ素以外の多くの不純物元素(銅精鉱:Bi,Cd,Co,Mo,Ni,Pb,Sb,Tl,亜鉛精鉱:Bi,Ca,Cd,Co,Cu,In,Mg,Mn,Ni,Tl,鉛精鉱:Cd,Cu,Mn,Tl)も,ひ素と同時に定量できる可能性があることを確認できたことから,2019(平成31)年3月にオーストラリアで行われた国際会議(以下,シドニー会議)にてこれらの結果を報告し,臭素分解法が既存ISOよりも精度が優れた分析方法であることをアピールするとともに,同会議にてSG5のスコープを複数成分に拡大することが了承された。今後,本活動を継続し,Stage B共同実験を行ってデータを検証し-127-鉱山第787号2020年8・9月