ブックタイトル鉱山2020年6月号

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概要

鉱山2020年6月号

で「水銀含有再生資源」との法的な名称が付けられた。このスラッジは野村興産㈱イトムカ鉱業所で水銀を回収するために同所へ委託精錬され,水銀除去後の残渣は委託元の製錬所に戻されている。野村興産㈱では非鉄金属製錬所からの水銀含有スラッジだけでなく,水銀含有の蛍光灯や電池からも水銀を回収している。このように回収された水銀の一部は国内の需要もあるが,大部分(年間約50~100t程度)の水銀は海外へ輸出販売されており,輸出先の用途が小規模金採掘でないことを確認のうえ出荷している。このように水銀の輸出も含めて非鉄金属製錬業全体で資源循環が確立されており,こうした循環システムは,使用済み家電製品等のリサイクル品から金,銀,銅,白金族も含めレアメタル等の有価金属の回収や廃棄物の有効利用や減量化に貢献している。2020(令和2)年末から水銀の製造や輸出が制限される。直ちに輸出ができなくなるわけではないが,将来余剰水銀が廃棄物となることが予想される。余剰水銀については,2015(平成27)年10月に廃掃法の一部改正で「金属廃水銀は硫化固化し,更にポリマー固化して溶出の極力少ない状態にして溶出基準を満足すれば管理型処分場で処分すること」と決められ,2017(平成29)年10月1日に施行となった。しかし,この硫化固化・ポリマー固化した水銀を処分する管理型処分場の設置については候補地となる地方自治体が難色を示しており,なかなか前に進まない状態にある。そこで,廃水銀の処理・処分のシステムについては,今後も産・官・学を交えて十分に深く慎重に議論し,検討していくべきである。廃水銀の処理・処分のシステムは長期の永続性の観点から,国自らが行うか,もしくは確実な技術と保管・処分場所を有する企業(たとえば野村興産㈱)に業務委託し,諸外国と比較して妥当性のある低廉な保管コストで運営されるべきである。なお,水銀の硫化固化・ポリマー固化物は長期(100年以上)の安定性が未だ立証・確認されていないことや,硫化固化・ポリマー固化時の水銀およびその化合物の大気飛散リスク,更に金属水銀と硫化ポリマー固化物の容積の比較や金属水銀の将来の利用の可能性等も合わせて考え,金属水銀での永久保管も視野に入れるべきである。また,水銀廃棄物が発生する状況となれば,既に廃掃法で決められたように金属水銀を硫化・固形化し,ベントナイトで囲ってコンクリートの箱に入れて埋立処分をしなければならない。しかし,当業界は埋立処分をするための最終処分場の設置に必要な住民合意や地方自治体の許可を得ることが非常に困難であると判断している。その理由としては,水銀処理物の長期的な安定性の判断が出来ないことと,最終処分場の長期的な管理責任の所在が明らかではないことにある。現在の法律では不可と判断しているものの,水銀処理物をドイツ等の岩塩坑で処分してもらうことが出来れば世界的なレベルで考えてベストな方法と考えている。当業界としては,水銀の製造や輸出が制限される期限を迎えることを鑑み,水銀廃棄物の処分方法について環境省の検討会で早期に方向性を決めていただきたい。6.産学官連携による技術開発の推進と人材育成大きく環境変化するグローバルな市場で当業界が持続的な発展を遂げていくためには,継続的な生産コストの引き下げや,新しい時代の変化に対応した探鉱開発技術,製錬技術,環境保全・公害防止技術,及び,リサイクル技術,高度な新材料技術などの開発を積極的に進める必要がある。これまでJOGMECを中心に資源・製錬・リサイクル・鉱害防止分野などで産学官連携による技術開発が行われてきたが,更なる推進が必要である。「1.(4)資源分野の人材育成強化」や「1.(9)5)地熱井掘削に係る人材及びリグの確保」に記載のとおり,資源分野や製錬分野の人材育成が重要だが,加えて,大学において教育の実践を担う中鉱山第785号2020年6月-22-