ブックタイトル鉱山2020年6月号

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概要

鉱山2020年6月号

地熱発電はベースロード電源と位置付けられてはいるものの,既存の地熱発電所については,その設備利用率が1998(平成10)年頃は平均75%程度を維持していたが,2010(平成22)年以降は60%を下回っており,減衰が進んでいる状況にある。この背景には,継続的に地熱発電を行うためには代替井の掘削(発電に必要な蒸気・還元量が減衰した場合にそれを補うための生産井・還元井の掘削)と適切な操業管理技術が必須とされるところ,地熱エネルギーは地下深部に賦存し,可視化して状態を把握できない特殊性から多大な費用を要する代替井の掘削はリスクが伴い,かつ民間企業としての投資判断もあり,本来設備利用率を維持すべく行う代替井の掘削が計画的に実施できていない状況がある。この代替井の掘削は,既存の地熱発電所にとって,また将来的には新規の地熱発電所にとっても,継続的に地熱発電を行うために必要であり,加えて地熱発電によりベースロード電源を確保するという国の施策上の要請もあり,代替井の掘削費用に対する助成や特別控除等の新たな支援制度の創設を強く要望する。また,操業管理技術については,地下における蒸気・熱水の挙動を把握し,地熱発電所の設備利用率の向上を図るため,現在行われている地熱貯留層評価・管理技術開発事業を今後とも継続していくことを強く要望する。さらに,既設地熱発電所への地熱蒸気供給事業についても,電力自由化等の影響で売電・蒸気価格が引き下げられ,事業性が悪化し,代替井の掘削が控えられる恐れがある。従って,既設地熱発電所においても,事業が継続・維持できる売電・蒸気価格を設定できるような施策を要望する。2)妥当性のある「運転開始期限」の設定2018(平成30)年4月,新たにFIT認定を受けた発電設備に対する「運転開始期限」の設定が始まり,環境アセスメントが必要な場合に地熱発電については,そのアセスメントに係る主務省令の手続期間を考慮し,更に4年間の「運転開始期限」の付加期間が認められた。しかし地熱発電は,国有林や保安林の利用や条例アセス等を要する場合も多く,その手続きのため,事業者の責に因らない期間があり,更には送電事業者の行う系統連系工事に長期間を要する場合もある。地熱発電は山間奥地が開発対象地域となることが多く,豪雪地域では安全のために冬季の休工を強いられる。そのため,発電所ごと,その実情に応じた「運転開始期限」の付加期間を認めるべきであり,妥当性のある「運転開始期限」の設定となることを強く望み,併せて国有林野や豪雪地域などの特定の地域が開発対象地域の場合に不利益を被らないよう要望する。3)送変電設備整備等への支援FIT法は,適正な買取価格を設定するにあたり,効率的に発電を実施する場合に通常要する発電費用及びその発電量を基礎として,再生可能エネルギーの発電状況,事業者の適正な利潤及びFIT法施行前からの再生可能エネルギーの発電費用その他の事情を勘案するとしており,我が国の再生可能エネルギーの導入を促進するための法律である。しかしながら,地熱発電は風力発電と同様に今後さらに山間奥地が開発対象地域となり,送変電設備に要する費用が増大するとともにFIT法施行前に建設された地熱発電所に比べても送変電設備の費用割合が著しく大きくなり,設定された買取価格では事業化が困難な開発案件が増えると想定される。従って,将来における国立・国定公園内等の山間奥地における地熱開発を促進するためにも,送変電設備に要する費用,つまり連系工事負担金については上限額を設定するなど,事業化への鉱山第785号2020年6月-8-