ブックタイトル鉱山2020年2月号

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概要

鉱山2020年2月号

(a)(b)500 nm 500 nm図9 SiO蒸着基板のFE-SEM写真(a)電極用蒸着膜表面(b)過剰SiO供与条件での表面単体と同じで,初期充電時に安定相であるLi 4 SiO 4を生成し,この安定相と共存して充放電が繰り返されていることになる。ケイ素単体での高いサイクル特性を持つ電極が実現できていないことを考えると,この安定相として存在しているLi 4 SiO 4が一定の緩衝材の役割をはたしていると思われる。・製品化への課題今回の電極の性能評価は対極にLi金属を用いたハーフセルで行ったが,実用化に向けては対極をLi金属から市販正極にしたフルセルでの評価が必要になる。その際の課題となる問題点が2点ある。1つは,初期充電で安定相であるLi 4 SiO 4の生成で消費するLiをどこから供給するかという点である。特段の事前処理なしでセルを組みフルセル電池として用いると,正極が持つLiの25%近くがこの安定相の生成に使われるため,その消費量がそのまま性能劣化につながってしまう。正極は理論容量が今回の負極の8%程度しかないため,正極からのLi供給を行うと電池の容積の大半が正極に占められることになる。もう1つの問題点としてSEI形成がある。SEIは定量的には扱えず,実際のセルで評価して生成を確認している。今回の負極においては,充放電でSEIの生成・破壊が繰り返されることでLiが消費されている。クーロン効率から見ると,Liが充放電に99%以上利用される状態へ達するのは100サイクル程度のサイクル後になる。これら充放電に関与できないLiを事前に対極リチウム金属で別途セルを組み,Liのプレドープでフルセルでの正極からのLi消費を抑えるやり方がある。反応式で示される安定相Li 4 SiO 4の生成のみであれば,プレドープは1サイクルで終了となるが,前述の通りSEIの生成でもLiが消費されるので,実際にはかなりのサイクルを回す必要がある。プレドープに関しては他のSi系負極でも問題となるため,多様なアプローチがされており,その成果も活用しつつ改善していく予定である。今回の電極はナノスケールの蒸着膜を電極活物質として用いているため,その重量は非常に小さい。直径15mmのステンレス基板上に0.22mgのSiOを蒸着しており,単位面積当たりの容量は0.2mAh cm -2となっている。フルセルの電極としては,正極と負極の容量を一致させて用いる。市販されている正極シートのカタログスペックは数mAh cm -2の容量となっているため,対応するSiO膜は膜厚を現在の10倍程度に厚膜化する必要がある。しかしながら,蒸着法での厚膜化には非常に困難が伴う。SiOはナノレベルで観察すると蒸着膜の表面はあまり平坦ではなく凹凸-24-鉱山第783号2020年2・3月