ブックタイトル鉱山2020年2月号

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概要

鉱山2020年2月号

作製した電極と一般的な電極の構造模式図を図6に示す。蒸着したSiO膜は緻密で一様な膜を形成し膜厚は70nm程度となっていた。その上部には50nm程度のカーボンブラック粒子が連なり,その下部がSiO膜と接している。今回のカーボンブラック層は均一性を重視したため,厚みが数μm程になっているが,電極として機能するためにこの厚みが必要という訳ではないため,成膜技術の高度化で薄膜化を図る予定である。一方,一般的な電極では数μm程度の膜厚に活物質の微粒子と導電助剤の炭素粒子を結着剤が結びつけており,これらが均一に分散していることが活物質からの電子を確実に取り出せることにつながるため,安定的な性能を発揮する上で重要となっている。・新規積層膜電極の電気化学特性評価開発した積層膜電極の電気化学特性を,対極にLi金属を用いたハーフセルで評価した。セルは2032型コインセルを用い,電位のレンジを0-2.0V,電流密度を0.1C(200.7mA g -1),温度を25?Cに設定して行った。参考までに,同条件で図6に示した一般的な構造を持つ電極を用いて電気化学測定した際のサイクル特性を図7に示す。初期充電のみについては黒鉛を大幅に超える2200mAh g -1程度の容量を示したが,その容量は充放電を繰り返すと直ちに劣化が始まり10サイクル後にはほとんど容量が無くなってしまった。初期充電に関しては後に記述するが,不可逆容量が発生しその容量が加算されているため,このままでは電池として利用することはできない。一方,今回開発した積層膜構造を持つ電極の1,2,10,100,500サイクル時の充放電曲線とサイクル特性を図8に示す。負極として用いるため,低電位に向かう場合が充電で,電極活物質にLiが挿入される反応に対応し,高電位に向かう場合が放電で,電極活物質からLiが脱離する反応に対応する。負極活物質にSiOを用いる場合,Liの挿入・脱離反応は以下の反応式で表記できる。[13]4SiO + 17.2Li + + 17.2e -→3Li 4.4 Si + Li 4 SiO 4(初期充電反応)Li 4.4 Si ? Si + 4.4Li + + 4.4e -(充放電反応)初期充電反応で生じるLi 4 SiO 4は安定相で,その後の充放電反応には関与しない。これ以外の充放電反応は,ケイ素を活物質として用いた場合と同じで,ケイ素1に対してLi4.4の比まで取り込むことができる。そのため,活物質SiOの理論容量は2007mAh g -1となる。充放電曲線には反応式で示された様に,初期の充電曲線においては1.0V付近に平坦部が見られ,このプロセスのみでLiが過剰に取り込まれCapacity / mAh g -1Cycle numbervs Li + ,1MLiPF 6 in EC:DMC=1:1, 0.1C, @ 25?C図7一般的構造を持つSiO電極のサイクル特性一般的な電極の構造新規積層膜電極Carbon (導電助剤)結着剤(r = 1-2μm) SiO (70nm)導電性基板図6 SiOを用いる一般的電極と積層膜電極の構造模式図-22-鉱山第783号2020年2・3月