ブックタイトル鉱山2020年2月号

ページ
24/48

このページは 鉱山2020年2月号 の電子ブックに掲載されている24ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

鉱山2020年2月号

新材料部会講演高容量かつ劣化しないリチウムイオン2次電池用酸化ケイ素負極国立研究開発法人産業技術総合研究所先進コーティング技術研究センター間宮幹人・はじめにリチウムイオン2次電池は近年その用途が自動車用を始めモバイル用や定置型蓄電用などに広がり,その市場規模は富士経済の予測で2023年には8.8兆円,2017年の2.3倍に拡大するとされている。[1]市場規模拡大につれて,その性能向上へのニーズも合わせて高まっている。リチウムイオン2次電池は,その電気エネルギーを得る化学反応に取り組む材料技術,高エネルギー密度や低コスト化に取り組む設計・製造技術,暴走防止など安全を確保する制御技術など,多様な技術の集合体で成り立っており,社会ニーズに応えるべく大学,公的研究機関,企業それぞれの分野での開発が進められている。放電時は電子を受け取るため還元反応になる。負極活物質では逆の反応となり,電極活物質は充放電時に正負極とも酸化還元反応を行っている。正極をアノード,負極をカソードと呼称する場合があるが,電池として使用する場合は放電反応になるため,酸化反応を意味するアノードは負極,還元反応を意味するカソードは正極となり慣用的に用いている意味と逆になる。本文においては混乱を防ぐため,正極・負極と表現する。正極・負極間は電解質が存在しリチウムイオンの伝導性を有し,電気伝導性が無いため,外部に接続された電気回路へ電子が流され電気エネルギーとして利用することができる。現在市販されている電池では電解質に可燃性の・リチウムイオン2次電池の基本原理リチウムイオン2次電池は正極・負極とその間に存在する電解質から構成される。基本的概念図を図1に示す。正極・負極は化学反応を起こす電極活物質に電気伝導性を助ける導電助剤を混合し,それらを支える結着剤から構成される。両電極間にはリチウムイオンを伝導し電子を移動させない電解質が存在する。充電時には正極活物質からリチウムイオンが脱離すると同時に集電体に電子が放出され,負極活物質では電子が供給されると同時にリチウムイオンが活物質内に挿入される。放電時は逆に負極活物質からリチウムイオンと電子が放出され,正極活物質がそれらを受け取る。充電時の正極電極活物質の反応は電子を失うため酸化反応であり,集電体正極Li +放電Li +Li + Li +Li +電解質Li +負極充電正極活物質負極活物質導電助剤結着剤放電充電e -図1リチウムイオン2次電池の概念図集電体鉱山第783号2020年2・3月-17-