ブックタイトル鉱山2020年1月号

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概要

鉱山2020年1月号

模の大きさを感じさせます。本資料館は柵原鉱山の歴史や培ってきた技術を詳しく学ぶことができるとともに,当時の人々の生活を肌で感じることもできる充実した展示内容でした。再びバスに乗り込み,次の卯根倉鉱業㈱西部事業所へと向かいます。ここでは,閉山した柵原鉱山の鉱水処理を主な業務としています。鉱水の処理自体は鉱害問題が顕在化した1920年代から開始され,同じころ現在の場所に鉱水処理場を建設,柵原鉱山の閉山後は坑道内を湛水し,吉井川の水位レベルより低い位置,海抜40mとなるよう水位を調整しながら揚水して処理を行っています。昨年度の処理水量実績は約100万m3。長雨が続くと処理水量が追い付かなくなるのでは,との質問には揚水量を増加して対応しているとのこと。昨年の西日本豪雨の際でも本対応でまかなえたとのことで設備の処理能力の高さがうかがえます。現在は2014年に稼働を開始した新設備となっており,今回の見学では一つ一つの設備について実際に回りながら順を追って説明していただきました。くみ上げられた坑内水は脱ひ素工程に入り,鉄を硫酸第二鉄液(同事業所の副産物で無機凝集剤として販売。商品名:バイオフェリックス)として供給し,pH調整してひ素を固定化。次の酸化工程では鉄酸化バクテリアを利用してFe(Ⅱ)をFe(Ⅲ)に酸化,シックナーで回収したバクテリアは酸化工程へ戻されます。また,図2卯根倉鉱業で説明を聞く部会メンバー処理液中の鉄は次の鉄凝集槽内でpHを調整し鉄を凝集,シックナーで回収してバイオフェリックス製造工程へ送ります。最後に中和工程にて炭酸カルシウムと消石灰で2段中和したのちシックナーで沈殿物と分離し,処理水は吉井川へ放流,沈殿物は火の谷ダムへ運搬されます。吉井川へ放流する際も常時pH・濁度などは監視されており,基準から外れた場合は非常用水路に自動で切り替え,受け槽にためるようにしています。その受け槽も2段構成にしていると伺い,万が一の備えに万全を期している印象を受けました。処理工程自体も回収・再投入を繰り返すようになっていたり,生物化学反応を用いたりするなど,環境負荷低減とリサイクルの思想が息づいていると感じました。また,地表面に近い坑道内も見学させていただきました。ここでは同事業所敷地内にある坑道の一部を地域に開放しているとのことで,坑道内特有の一定な温度・湿度環境を生かして,坑内農業やトレーニングジムに利用しています。実際に見学した坑内農業を行っている部屋では,適切な環境ですくすく育つこぶしぐらいの大きさのシイタケをいくつも目の当たりにしました。トレーニングジムの設備も充実,さらに低酸素環境を作る設備を導入して標高1,000m~3,500mを再現できるトレーニング走路(直線42.195m)もあります。もしかすると,将来ここでトレーニングを積んだ未来のアスリートが,いつか世界へ羽ばたく日も来るのでしょうか。いずれにせよ,その地域貢献を大切にする姿勢は見習うべきと感じました。翌日,11月29日はエコシステム山陽㈱へ。同社はDOWAホールディングス株式会社の西日本地区における産業廃棄物処理を担っています。1977年に前身である岡山砿油株式会社として設立,翌年に操業を開始,従業員は約160名(うち正社員142名),操業自体は3交替で行っているとのこと。会社概要の説明の後,4号炉,3号炉及び2号炉,分析部門の順に見学を行いました。4号炉は2011年に稼働開始した日本で初め鉱山第782号2020年1月-63-