ブックタイトル鉱山2020年1月号

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概要

鉱山2020年1月号

2-3.信州大学カーボン科学研究部門林卓哉教授「基盤分析・高度解析部門と連携したナノ炭素材料の研究」林先生は,分析部門と連携してナノ炭素材料を解析するアプローチで研究を行っており,特に高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いた高解像度の分析を得意とされています。高倍率のTEM像を撮影するだけでなく,例えばカーボンナノチューブ(CNT)の構造決定においてFFT解析を行いカイラリティを見るとか,半導体デバイス作りに役立てる解析を行っているとの事です。グラフェンの超電導化の分析やCNTのアーク放電をその場観察,CNTの圧縮伸縮と導電性の評価などカーボンに関する分析は広範囲に及んでおり,分析技術に相当なノウハウを蓄積していると思われました。材料開発としてユニークな取り組みは,RO膜の材料にCNTを混ぜて作成する研究や,3次元グラフェン構造体の生成として50μm程度のマイクロチューブ作成の研究です。2層程度のグラフェンでマイクロチューブが出来ると光透過率が97%程度で収まるはずなのでとても期待できる材料になるそうです。ゆくゆくはマイクロリアクターにも適用できるように開発をしているとの事です。2-4.信州大学フラックス結晶研究部門手嶋勝弥教授「フラックス結晶研究部門の研究開発」信州大学が持つ無機結晶の育成技術を「信大クリスタル」としてブランド展開しているそうです。結晶の析出・成長は過飽和度のコントロールが肝なので,溶媒と雰囲気を制御すれば良く,フラックス法の利点は簡単な設備と優しい操作で熱ひずみの少ない結晶ができる事です。欠点は大型結晶が難である事,フラックスの選択が難しい事,そしてインクルージョンの問題があります。プロジェクトは数多く行っており,例えばLIB写真1信州大学にて集合写真の活物質の高品質化はその一つだそうです。ユニークな研究成果として,窒化ホウ素(BN)のアスペクト比を小さくして等方性にできる技術をもつとの事です。熱伝導性に優れるBNは等方性の方が好ましいので熱導電性フィラーの材料として高付加価値であるのは間違いありません。今後の研究は,膨大なレシピ(データベース)を用いて計算科学や機械学習にも応用していくそうです。第一原理計算手法としてのDFT計算(density functional theory密度汎関数理論)を行い,結晶外形を含む状態図を予測したり,機械学習の導入は実証化試験で好適であると考えておられます。最後に社会実装した例としてトクラス株式会社(旧ヤマハリビングテック)から販売されたNaTiOという携帯型の浄水ボトルを紹介されました。1個2980円はアフリカで展開するには少し高いので,ティーバッグ型の高性能吸着剤の開発に取り組んでいるそうです。信州大学に技術相談に来られた方には差し上げますとの事でした。3.富士通インターコネクトテクノロジーズ株式会社長野本社2日目は宿泊した長野駅近くのホテルから善光寺を経由してバスで30分程走行し富士通インターコネクトテクノロジーズ株式会社(略称FICT)長野本社に到着しました。長野市は台-58-鉱山第782号2020年1月