ブックタイトル鉱山2020年1月号

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概要

鉱山2020年1月号

から使用している建屋が多いと言われていましたが,各設備が整然と配置されている印象でした。また環境には大分配慮して黒松やソメイヨシノを積極的に植林するとともに,地域の小学生の見学を積極的に受け入れているとのことです。工場のフローとしては原料工程,製錬工程,選別工程の3工程に分かれています。まず原料工程です。原料の鉱石はニューカレドニアやインドネシアからの輸入だったらしいのですが,インドネシアが鉱石の輸出制限に踏み切り,22年までの輸出緩和策も今年度中に撤廃と打ち出しており現在はニューカレドニア産の原料がメインとなっているそうです。ご多聞に漏れず鉱石の品位低下が悩みと仰っていました。原料運搬は天の橋立で外海とさえぎられた立地上,天の橋立の外の宮津湾内で原料運搬船から艀にいったん移し,艀は水路である文殊水道を通り,天の橋立にかかる回旋橋を通って阿蘇海に乗り入れて工場に運ぶそうです。運搬効率から見ると景勝地独特の悩みかもしれません。鉱石は艀から陸揚げされトラックにて屋外・屋内原料ヤードに貯鉱されたのち,エアロフォールミルやチューブミルにて粉砕後,ロッドミルにて副原料の無煙炭と石灰石と混錬しブリケットマシーンにて原料のブリケットとなります。次に製錬工程です。製錬方法は国内唯一,世界的にもあまり例がない大江山法(クルップレン法)というキルンを使用する製錬法を採用されています。Fe-Niの一般的な電気炉法に比べエネルギーコストが低い製錬法ですが,もともとドイツの泥炭を利用した低品位鉱の製錬法で,中国でも採用しようとして技術的に難しく断念したという独特の製錬法だそうで,技術の高さが感じられます。キルンは5基あり,直径は3.6mで72mの長大なキルンです。実際の製錬工程では原料はプレヒータにて予熱後キルンに投入され10時間かけて予熱,脱硫,還元されFe-Niとスラグからなる溶体となり炉の出口で急冷されクリンカーを作りクリンカーピットに貯められます。炉の最高温度は1,400℃に達しているとのことです。基本的にはブリケットから発生するガスは少ないのですが,排ガスは湿式で処理されるため亜鉛等の重金属や硫黄は排ガス中から回収されます。湿式で急冷された結果ダイオキシンの発生の抑制に効果があるそうです。処理水は循環使用されているので重金属は工程内にため込まれ,ある期間が経過したところで回収するそうです。最後の工程である選別工程です。クリンカーはマーシミルにて破砕され比重の違いによりFe-Niとスラグに分離されます。Fe-Niはドライヤーで乾燥後,製品のフェロニッケルルッペとして川崎製造所にトラックやJRで運ばれます。スラグは磁力選鉱機でスラグ中のNiを回収した後に分級機で粒度ごとにナスサンド及びナスファインサンドという製品名のフェロニッケルスラグとして販売されます。ナスとは日本冶金工業㈱のステンレス鋼のブランド名でNIPPON-YAKIN AUSTENITE STAINLESS STEELの頭文字からナスというそうです。ナスサンドはショットブラスト用や土木用が主な用途ですが土木用はJISを遵守する必要から品質管理に気を遣い,ナスファインサンドは用途開発に注力しており,直近で有効な用途も見つけられているとのことでした。環境面での大気系は湿式集塵機と電気集塵機を通して大気放出,排水系は工場内の雨水もすべて排水シックナーに集約して工場内で循環するものと,適正に処理して排水するものにわかれるということだそうですが,排水基準が厳しいので非常に注意を払っているそうです。また工場内の発塵対策としては散水車やスプリンクラーを使用されています。このほか各種モーターのインバータ化による省エネや太陽光発電の導入など地球温暖化対策にも前向きにとりかかっているとのことでした。以上の説明をいただいたのち見学に入りました。見学は井田様に対応いただきました。鉱山第782号2020年1月-53-