ブックタイトル鉱山2020年1月号

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概要

鉱山2020年1月号

図1三菱連続製銅法ができる12.5kgの金のインゴットをはじめとした貴金属地金製品を,間近で見学させていただきました。以下,各所で丁寧にご説明いただいた内容を,質疑も含めてまとめて記します。三菱連続製銅法とはS炉~CL炉~C炉が連なる製錬法であり,転炉などのバッチ処理炉を有しません。S炉は,その直径が10m,最大深さ1.5mの円形の炉で,10本のランスにより酸素濃度約65%のエアーとともに鉱石を炉内の熔体へ高圧で吹き込んで溶解し,銅品位65%の鈹(マット)と鍰(スラグ)にするものです。樋でつながったCL炉でそれらを比重分離し,鍰は水砕して九州の自社セメント工場の原料(骨材)他とし,鈹は樋を通じてC炉へ送り,そこで石灰や冷材を投入しながら酸素濃度約45%のランスエアーを吹き込み,処理することで銅品位98%の粗銅とし,さらに樋を通じて精製炉へ送り,粗銅中の硫黄を酸化して除去後,残留酸素を燃料焚きで還元除去することにより,銅品位99%の電解用アノードを作ります。この三菱法は,海外拠点のインドネシア工場(1998年~)の他,韓国の温山LSニッコー第2炉(1998年~)やインドのDahej,カナダのKidd Creek(2010年閉鎖)へも技術輸出されているそうです。今回の現場勉強会のポイントである再資源化原料のE-scrapは,月間処理量の約半数弱を未焙焼の生基板屑として直接S炉に供給し,残りは,キルンで予め焙焼後,スラグメタルとしてS炉へ投入するそうです。三菱連続製銅法で,これほど多くの前処理不要な生基板屑がS炉へ直接供給できているのは,当工法では硫酸着色などの影響がないことをしっかりと確認するとともに,供給方法や排ガス成分などを十分に分析し,ステップを踏みながらS炉への処理量を徐々に増やしてきた努力と実績の積み重ねによる賜物だと感じました。S炉へ供給するスラグメタルとなるE-scrapは,元々シュレッダーダストを処理する目的で導入された外径6m,内径5m×長さ14mのキルンにより,炉内温度1,200℃×滞留時間約40分で処理・原料化され,排ガスはダイオキシン対策を講じて大煙突から大気放出しているそうです。今やキルン焙焼へのインプットは,シュレッダーダスト3割,有償滓7割の比率となっているそうで,そのE-scrap処理量の多さから,所謂都市鉱山からの再資源化処理に積極的である様子が窺えました。これらの再資源化と環境活動への取組みの成果は,上述したE-scrapなどの金銀滓の有価金属リサイクル(2004(平成16)年~)と,鉱石処理および関係会社のスライム処理とを合計して,「金で年間約50t,銀で年間約400t,銅で年間約27万t」の生産を実現しているそうです。金は,直島製錬所内で銅アノードの電解スライムから塩酸と過酸化水素混合液を用いたクロリネーション法で金のみを浸出し,溶媒抽出法を用いて地金とし,銀は前述の浸出残渣から電解法により30kg塊とします。その他,白金,パラ鉱山第782号2020年1月-49-