ブックタイトル鉱山2020年1月号

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概要

鉱山2020年1月号

電子モル当たりの価格円/kmol-e -15000100005000経済合理性の指標0O 2 H 2HClOCOMeOHH 2 O 20 50 100kg-CO 2 /kmol-e -電子モル当たりのCO 2排出係数より好ましい有用化学品温暖化の影響指標図7様々な化学品の電子モル当たりのCO 2排出係数および電子モル当たりの価格との関係の指標である電子モル当たりの価格(円/kmol-e -)で比較すると,過酸化水素と次亜塩素酸では酸素に比べて~140倍および250倍(水素に比べて~18倍および33倍)程度であり,やはり水分解より格段に優れている。これらの酸化剤はごく一部の例であり,それ以外にも多くの高付加価値の化学薬品,例えば,過硫酸,過ヨウ素酸,Ce 4+,Cr 6+,有機物等は候補例である。それぞれの製造量は少ないものも多いが,多彩な種類の化学薬品を全て合わせた総量は膨大になる。製造した様々な酸化剤の水溶液はその強い酸化力を利用して,有機汚染物質の浄化や,排水処理,漂白,殺菌,消毒,洗浄,選択的有機変換などの様々な分野に利用できる。特に,再生可能エネルギーを用いた分散型オンサイトの殺菌溶液の製造による飲料水の浄化や排水処理などでは早期の実用化が見込まれる。従来の化学品製造は化石資源を用いた大規模集中型である。消費地では希釈して利用されるが,輸送するために高濃度に濃縮する必要があるため,その過程で膨大なCO 2が排出される。分散型オンサイト製造では必要な濃度と量を需要に合わせて製造することで省エネルギーになると期待される。次に,具体事例をいくつか示す。過硫酸(H 2 S 2 O 8)は半導体デバイス作成過程において,半導体ウエハの洗浄,レジストや金属膜の剥離のために工業的に利用されている。硫酸水溶液からダイアモンド電極等を用いて非常に高い電圧で電解オンサイト製造されている。その電圧を著しく下げる技術として光電極は利用できる可能性がある。その酸化還元電位は非常に正に大きな値であるので,酸素製造に比べてエネルギー変換と貯蔵の効率は高くなる可能性がある。我々は,多孔質WO 3を用いてABPE=2.2%を達成した。酸素発生は観測されず,酸化生成物の2S 2 O - 8への選択性(Faraday効率:FE)はほぼ100%であった。外部バイアスに色素増感太陽電池を接続して,自立型のSolar-to-H 2効率として5.2%を達成している10)。最近,スポンジ状の厚いWO 3光電極を用いて,光電流を3mA/cm 2以上に向上させ,ABPEを2.45%まで向上できている14)。漂白剤や消毒薬として広く使われている次亜塩素酸塩も有用な酸化剤である。我々はBiVO 4 /WO 3光電極を用いて,NaClO生成のFEが約80%になること,および反応初期においては97%と非常に高いことを報告した16)。対極でO 2還元を行えば,オンセット電位がマイナスにできることを確認できた。小さな分散システムで鉱山第782号2020年1月-33-