ブックタイトル鉱山2020年1月号

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概要

鉱山2020年1月号

ジュールと等価になる。この効率単価φおよび効率寿命単価?の議論手法は最低限の積み上げであるが,この時点で高価すぎれば問題外と判別できるようになる。実際には,大面積化やガス捕集,容器,パイピングなど様々な付帯設備を積み上げて,φ<500円/m 2 /%および?<25円/m 2 /%/yのシステムを設計構築する。高価すぎれば根本に戻って前提を練り直すことを繰り返す。装置寿命見積もりや定常運転コストの低減,消耗品の交換頻度,減価償却前後の運用など様々な詳細想定を行う。この全体像の構築をイメージすることが最も知恵を絞るべき最重要の過程である。筆者らはこの手法を用いて最適な様々な人工光合成システムの検討を行っているところである。そして最後に,大面積でのシステムイメージが固まって候補が絞られたら,具体的に詳細な積み上げコスト試算を行うことになる。6.光触媒-電解ハイブリッドシステムによる経済性のある水素製造技術産総研の独自技術であるレドックス媒体を用いた光触媒-電解ハイブリッドシステム(図5)8による水素製造技術)は,水素と酸素を始めから分離発生できて爆発の危険性無し,光触媒部分で水素捕集が無いので大面積化が容易,水素の純度が高い,光触媒に貴金属不要,レドックスに太陽エネルギーを数日から数ヶ月単位で蓄積できるので水素需要供給や電力余剰状況に合わせてタイムシフト調整できる,電界電圧をレドックス準位程度(鉄レドックスで0.77V前後)にできる,などの多くの長所を持つ。現状の光触媒のレドックス反応の太陽エネルギー変換効率(η)は0.65%であり,トウモロコシ並になっている。このηの値は,直接水素を生成していないが,最終的に水素に取り込まれるので,一般的な太陽エネルギー変換効率と等価である。天然の光合成明反応の素反応であり,まさに人工光合成反応と言える。鉄イオンレドックスを用いた反応の理論限界効率は24%であり,更なる効率向上は十分に可能である。このハイブリッドシステムに関しては,既に積み上げコスト8を報告)しているが,もし3%以上まで効率が向上できれば,水素製造コストとして日本の土地の安価な場所で30円/Nm 3以下は可能と試算している。また,中東の砂漠のギガソーラー+水電解システムに対して,光触媒をハイブリッドすれば,水素製造コストを4~7円/Nm 3引き下げて,結果的に18円/Nm 3程度またはそれ以下にすることができ,水素のグローバルサプライチェーンを構築できる可能性もこのような詳細試算から見えてくる5,8)。我々は本システムのLCA評価を行い,ある条件下で十分なCO 2排出削減ができることも簡易的であるが確認できている。図5光触媒-電解ハイブリッドシステムの水素製造のイメージと原理7.人工光合成による有用化学品製造筆者らは,独自の経済合理性のある人工光合成技術として,光電極による有用化学品製造の研究を近年精力的に行っている。人工光合成分野では,水素やCO 2還元などの燃料製造を中心に研究されてきた。天然の光合成は燃料だけを製造しているのでは無く,人類に役に立つ物質を製造している。人工光合成の反応も,燃料製造だけを目的にするのでは無く,もっと広い目的鉱山第782号2020年1月-31-