ブックタイトル鉱山2020年1月号

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概要

鉱山2020年1月号

アノードではその差は小さいので,ここでは無視する。)外部バイアスの電力としては何でも良いが,議論として比較しやすいのは太陽電池かもしれない。1個や2個のセルでも良いし,ギガソーラーにインバータ(コストの数%の上乗せ)を組み合わせた電力でも良い。逆説的に言えば,これから増大する中東のギガソーラーからの余剰電力を外部バイアスとして使う場合,人工光合成技術がどのように貢献できるかという視点でも考えられることになる。そして結果的に,できるだけ早い時期に,大規模で安価な水素を製造するにはどうするかを議論できれば良いのである。外部バイアスを利用すると,電流電圧マッチングの最適化による高効率化や,光触媒のバンド制約が緩和されて半導体材料の多様性が広がる,などの大きなメリットがある。そして,最大のメリットは,太陽光発電と真に協調・融合して様々なシステムを幅広く検討しながら研究開発の集中ができることである。効率単価を使って試算する時は,基本は平均化すれば良い。太陽光発電の効率単価の基準値(φ=500円/m 2 /%)よりも小さな値の人工光合成技術を組み合わせることで経済性は向上できる可能性がある。例えば,後述の筆者らが長年研究を行ってきた,導電性ガラス上のバナジウム系や酸化鉄系の酸化物光電極アノードの水分解では,5~12mA/cm 2の電流密度,HC-STHとしてη>4%は可能である。塗布焼成の酸化物の成膜コストは数百円/m 2,導電性ガラスコストは500~1000円/m 2とすれば,効率単価φは200~400円/m 2 /%前後と想定されるので,その光電極部分ではφ<500円/m 2 /%は十分可能と試算できる。安価な導電性基板を用いればもっと安くできる。外部バイアスに太陽光発電等の既存再エネ電力を用いれば,研究開発を光電極アノード部分のみに集中できる。これも立派な人工光合成技術である。また,レドックス媒体を用いた光触媒-電解ハイブリ8ッドシステムによる水素製造技術)では,レドックス媒体を含む水溶液と光触媒を入れた樹脂製バッグ反応容器部分に関しては,DOEレポート7を参考)にして,300円/m 2前後のコストと考えている。現状の光触媒のレドックス反応の太陽エネルギー変換効率(η)は0.65%9)であるので,現時点でもφは500円/m 2 /%以下である。このηの値は,直接水素を生成していないが,最終的に水素に取り込まれるので,一般的な太陽エネルギー変換効率と等価である。鉄イオンレドックスを用いた反応の理論限界効率は24%であり,更なる効率向上は十分に可能である。もし3%以上まで効率が向上できれば,φは100円/m 2 /%以下の小さな値になる。以上のコスト議論は装置の寿命を考慮していない場合であるが,年寿命(y)で割った効率寿命単価:円/m 2 /%/y = ?についても議論できる(図3(B))。太陽光発電の発電コスト試算の場合,付帯設備は除外して,モジュールの面積単価と効率,寿命,スループット,歩留まり等を仮定して試算する。寿命の基本は20年であるが,これを延ばす試算もある。最も発電コスト試算に影響するのが,最初の3つのモジュールの面積単価と効率,寿命である。太陽電池モジュールの寿命を20年とすれば,効率寿命単価?=25円/m 2 /%/yの数字が基準値となる。一般的な太陽電池モジュールの欠点として,修理・リユースは非常に難しい。筆者の研究している色素増感太陽電池では色素や電解液を交換・バージョンアップできる利点を考慮した事もあったが,交換の人件費や封止信頼性を考えると現実的でなく,結論としてこのままの値を基準にするのが妥当である。一方,人工光合成の寿命を見積もるのは非常に難しいが,太陽電池モジュールの基準値と比較して同等以下になる寿命を推定することができる。光捕集モジュールの修理・リユースが現実的かどうかは装置の構造に依存するので,ここでは考慮しないこととする。上述の例の酸化物光電極アノードの効率寿命単価φを250円/m 2 /%で10年寿命,光触媒のレドックス反応容器のφを100円/m 2 /%で4年寿命であれば,それぞれの効率寿命単価?は太陽電池モ-30-鉱山第782号2020年1月