ブックタイトル鉱山2020年1月号

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概要

鉱山2020年1月号

当たりの効率に対するコスト(ここでは効率単価またはφと呼ぶ:円/m 2 /%)」で太陽光発電とある程度は比較できると筆者らは考えている(図2)。この手法はコストの積み上げが難しい技術でも議論ができる長所がある。幸い,DOEレポートでは,光捕集モジュールのコストが装置全体の中のかなり大きな割合(タイプ3で87%程度)なので,付帯設備コストはまずは除外して議論しても良いであろう。太陽光発電のコスト試算においても,通常は付帯設備コストを別枠で考える。ある土地に降り注ぐ太陽光照射密度は一定(日本では1500kWh/m 2 /年,サンベルト地帯では約3000kWh/m 2 /年)なので,エネルギー価格と同等であるが,面積当たりにすると直感的に分かりやすい。太陽光日射はいかに希薄であり,単位面積当たりでどれだけ安価なモジュールにすべきかが重要であることが感じられる。シリコン太陽電池モジュールが20%の太陽エネルギー変換効率(η)で国際市場価格の6000円/m 2とし3),△G基準の電解効率で60%(通常の△H基準で72%に相当)とすれば,単位面積当たりの効率に対する水素製造コストはφ=500円/m 2 /%となる。人工光合成にとって厳しい数字であるが,これが本計算方法の基準値である。10%および3%の太陽エネルギー変換効率(η)の光触媒モジュールは5000円/m 2および1500円/m 2であれば効率単価はどれも等価になる。光触媒の面積は後者では太陽光発電の4倍になるが,土地代が砂漠のように安価であれば無視できる。付帯設備コストが追加でかかるとしても,これが太陽光発電に対抗・競争する場合の概算の目標になるであろう。図3(A)に示したφ=500円/m 2 /%ラインがサンベルト地帯での概算で23~29円/Nm 3 -H 2に相当すると考えて良い。一方で,太陽光発電に「競争せずに協調」し,光触媒よりも格段に進んでいる太陽光発電を部分的に組み込む技術展開もある。光電極の外部バイアス(外部補助電力)として,太陽電池と組み合わせた小型モジュールの研究は最近増加している。ここで,明確化しておきたい事項が2点ある。1点目として,研究開発では効率やコスト目標は重要視されるが,「時間軸に合った目標設定」は曖昧な傾向がある。光触媒や人工光合成の研究は長期テーマとして位置づけられるが,ゆっくりしていると上述のようにその研究意義を失う可能性もある。長期的には,高効率で超低コストの粉末光触媒の開発が分かりやすいが,短中期的な実用化目標やイメージも準備しておくことは非常に重要である。2点目は外部バイアスについてである。光触媒・光電極の人工光合成分太陽電池+水電解人工光合成モジュール面積単価6000円/m 21500円/m 21500円/m 2効率η=20%電解効率60%12%η=3%η=10%効率単価φ=500円/m 2 /%φ=500円/m 2 /%φ=150円/m 2 /%効率寿命単価20年寿命?=25円/m 2 /%/y10年寿命?=15円/m 2 /%/y面積は太陽電池のη逆比例で同じH 2生成図2太陽エネルギー変換技術に関する単位面積当たりの効率に対するコスト(効率単価)の考え方。円/m 2 /%という単位で直感的にシステムの経済性が比較できる。土地代が安価な地域を想定。電解効率は△G基準(△H基準で72%)-28-鉱山第782号2020年1月