ブックタイトル鉱山2020年1月号

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概要

鉱山2020年1月号

うに思えるが,7,10本稿では紫外光が半導体を励起し,加えて可視光が色素を励起し,それらをZ ?スキームで連結する[半導体のCBに励起された電子が色素のhighest occupied molecularorbital(HOMO)に移り,続けてHOMOの電子がlowest unoccupied molecular orbital(LUMO)に励起されること]点で,可視光を有効利用し半導体は直接には作用しないDSSCとは根本的に異なる。4,5項と同様にアノード上にはTiO 2,カソード上にはBiOCl光触媒を配置した。そのTiO 2膜に各種色素を添加して発電試験を行った結果,アントシアニン色素の添加効果が良好であり,特にハイビスカスおよびローズヒップが有効で,色素添加なしの開放電圧と最大出力1.87V,47.4μW cm -2からそれぞれ2.11V,72.9μW cm -2 ;2.04V,64.5μW cm -2へと有意に増大した(Figure10-3,4)。類似構造と思われる商用色素も2.00V,73.1μW cm -2と有効だった(Figure 10-1)。11アノード上への色素添加により,HV-SCの開放電圧および最大出力が増大した理由をFigure 1112で考察した。色素のHOMO,LUMOの準位は文献1および紫外可視スペクトルの結果1を基にした。DSSCの場合と同様に,色素が可視光に増感してTiO 2のCBに電子注入するだけだと,開放電圧の有意な上昇(0.13-0.24V)を説明できない。上記のように,HV-SCの起電力はアノード上での励起電子とカソード上でのホールとのエネルギー差によって決まる(Figures 1,6,7)ため,色素のLUMOの準位が直接影響しているといえる。TiO 2中で紫外光励起された電子がZスキームで色素に連結され,HOMOからLUMOに励起される。ITO電極付近の光触媒中の色素分子中のこうした励起電子が直接電子注入されるものと推定される。一方,最大出力の増大は色素が可視光を有効利用することになるので,DSSCと同様の色素増感の効果,さらには上記のようにZスキームによる連結でアノード光触媒内での電荷分離が有効に進んだことが挙げられる。7.まとめと展望創案したHV-SCで単セル2V以上の起電力を得たが,触媒の改良その他で出力を生物電池並みにまで高めたい。また,完全に持続可能に動作するHV-SCの高電圧特性を生かして,地球温暖化ガスを変換するための難反応(CO 2光還元,3 N 2光還元等)速度を格段に増大するための負電荷として用いる研究を進めている。Figure 10アノード上にTiO 2(P25)を,カソード上にBiOClを用いたHV-SC中のアノードへ色素添加した際の電流-電圧特性。添加した色素は(1)商用PEC-TOM-P04,(2)Rosehip-Hibiscus(blend),(3)Rosehip,(4)Hibiscus。赤色は色素を添加しない場合Figure 11色素をアノード上に添加した際に開放電圧および出力増大する理由を示したエネルギー図-20-鉱山第782号2020年1月