ブックタイトル鉱山2020年1月号

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概要

鉱山2020年1月号

voltage-type solar cell,HV-SC)の実現を狙った。光のエネルギーを両極で利用するため,水の酸化還元電位(1.23V@pH7)には影響されずに,光で励起されるバンドギャップ相当のエネルギーをそのまま起電力としてとり出せる高電圧出力が最大の特徴といえる。52.酸化チタンおよび銀-酸化チタンを両極に用いる高電圧型太陽電池(HV-SC)まず,TiO 2薄膜をアノード上に,Ag-TiO 2薄膜をカソード上に塗布して,HV-SCの試験を行った。TiO 2は,n型半導体で水から電子を受け取りやすいためアノードに有利で,一方カソード上ではTiO 2とAgナノ粒子界面でのSchottky接合(Figure 2)により,電子がカソード側へ逆流することなくAg表面にてO 2分子を還元することを意図した。Agの仕事関数は4.52-4.74eVであり,TiO 2のCB下端は4.4V(真空準位で標準水素電極SHEは4.44Vであるため,0V@SHE相当)であるから,このような障壁が生じる(Figure 2)。アノードおよびカソードを塩酸(40mL)で満たし,両者をプロトン伝導膜(Nafion)で仕切った。前者にN 2を,後者にO 2を100mL min -1の速度でバブルさせて流通し,両極を石英窓を通して紫外可視光(Xeアーク灯)で照射した。5Figure 2 n型半導体と金属との界面に形成されるSchottky障壁。n型半導体の電子が金属側に流れ込み,フェルミ準位が一致することで出来る極間抵抗を0.5Ωと小さくした状態で,光照射を30分毎にON/OFFを繰り返した(Figure 3 A1)。カソード上のAg-TiO 2光触媒中のAg含有量を0.33重量%(wt%)から3.0wt%へ徐々に増やしたところ,生成電流は徐々に増加し(Figure 3A2),Ag含有量の1/3次に比例することが分かった。これはAg量に対する表面積(2/3次に比例),かつAgサイトがO 2還元反応に関わる式1の速度論的依存性(1/2次に比例)を考慮すると説明できる。5 O 2 + 4H + + 4e -→2H 2 O(1)2H 2 O + 4h +→O 2 + 4H +(2)次に,塩酸のpHを2から4へ変化させて発電試験を実施すると,発生光電流はプロトン濃度の1/2次に比例した(Figure 3 B3)。これもアノード反応についての式1およびカソード反応についての式2についての速度論で説明できる。5さらに,極間抵抗を500kΩから0.3Ωに変化させたときの電流-電圧特性を調べたところ,開放電圧(V oc)1.59V,最大出力(W max)57μW cm -2を記録した(Figure 3 C)。3.TiO 2およびAg-TiO 2を両極に用いるHV-SCのスタンドアローン化2項にて単セルで1.59Vの起電力を実現したが,外部からN 2およびO 2ガスをそれぞれ供給している。可搬でシンプルな電源として期待できるため,外部からガスを供給し続けることなく,スタンドアローン化するための比較発電実験を行った。Table 1に比較のためのパラメーターの組合せを示す。パラメーターの太陽電池での具体的内容をFigure 4に図示した。まず,N 2 /O 2ガス供給の有無で発電成績を比較した。ガスを循環させたTest 1に対し,Test 2では電流値の経時増加が見られなくなっている(Figure 5)。カソードに多量にあるO 2よりもアノードのN 2の循環の方が直接的に影響すると考えられるため,アノードで光生成したO 2による逆反応の影響と考えた。6-16-鉱山第782号2020年1月