ブックタイトル鉱山2020年1月号

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概要

鉱山2020年1月号

新材料部会講演両極に光触媒を用い,色素が起電力と出力を増幅する太陽電池千葉大学大学院理学研究院化学研究部門泉康雄1.背景と目的地球環境と調和する時代における,有力な持続可能エネルギーとして自然光の利用が挙げられる。地球上全体で人類が1年間で使用する全エネルギーは,地球上に届く太陽光エネルギーの1時間分でまかなえる。1問題は光エネルギーの電力への変換効率であり,シリコン太陽電池・色素増感太陽電池・ペロブスカイト太陽電池・有機薄膜太陽電池2および光触媒による水からの水素製造やCO 2光燃料化の開発・検討がされてきており,3それらの効率は着実に改良されてきている。4燃料や媒質を高効率で変換する光触媒を開発すれば,光から化学エネルギーを得ることで新たなエネルギー供給形態が可能になる。また,他のオプションよりも安価で電力を得ることが期待できる。太陽電池および燃料電池も含めて起電力は1V程度あるいはそれ以下であり,実用では必要な電圧を得るまでセルを直列にスタックして用いる点に本稿では着目した。この問題に対し,他ではなされていない取組みとして,光触媒を両極に用いることで単セルで3Vを生ずる太陽電池の実現を目指した。そのために筆者が考えたエネルギー設計図をFigure 1に示す。5アノード・カソード上共に光触媒(TiO 2およびAg-TiO 2)薄層を配置するアイデアで,両極に紫外可視光を照射することで光触媒を励起する。アノードでは水が光酸化され(Figure 1左),カソードではO 2が水に光還元される(Figure 1右)ため,反応後にはアノードに伝導帯(Conduction band,CB)の電子が,カソードには価電子帯(Valence band,VB)の正電荷のホールが残る。これらの光触媒には半導体を用いており,バンドギャップ(VB上端とCB下端とのエネルギー差のこと)と比較して,アノード電子とカソードホールとのエネルギー差はFigure 1の場合でみると酸化チタンTiO 2のバンドギャップ相当の3eVとなる。このエネルギーを直接,太陽電池の起電力として取り出し,従来にない高電圧型太陽電池(highFigure 1両極に光触媒を用いる高電圧型太陽電池のエネルギー概念図鉱山第782号2020年1月-15-