ブックタイトル鉱山2019年10月号
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鉱山2019年10月号
燃機関を使用した車と電気自動車を比較する。内燃機関の車では車の製造時に排出される二酸化炭素量と走行時に排出される二酸化炭素量と車をリサイクルあるいは廃棄する際に発生する二酸化炭素量の合計が車から排出される二酸化炭素量となる。電気自動車ではこれらの二酸化炭素排出に加えて電池製造時の二酸化炭素量が加わる。走行時の二酸化炭素の排出量は電力がどのようにして作られたかに依存する。ここでは,日本国内の電力を使用したとして二酸化炭素の排出量を見積もっている。カナダなど水力発電(二酸化炭素の排出がない電力)を使用する場合には大きく異なる。詳細は省くがガソリン車,ディーゼル車,電気自動車(EV)に関して二酸化炭素の排出量を計算した結果が図1である。ガソリン車とテスラ社製電気自動車を比較すると,90,000 kmまではガソリン車の方が二酸化炭素の排出量は少ない。電池製造時の二酸化炭素排出量が大きな影響を及ぼしている。日本の電力では二酸化炭素の排出量が多いため,90,000 km以上にならないと電気自動車は二酸化炭素の排出抑制に貢献しない。現状ではリチウムイオン電池が用いられる場合が多いが,リチウムイオン電池のエネルギー密度は高いものの,日本の電力を使用した場合,より高いエネルギー密度を有する電池が必要である。加えて,電池製造時の二酸化炭素排出量の低減も求められる。電池のエネルギー密度が向上すればこれらの問題は解決する。そのために新しい電池,革新電池の研究が行われている。ALCA-SPRINGプロジェクトはまさに高エネルギー密度を有する革新的な電池を実現するための研究開発である。4.革新電池の種類革新電池を実現するには,容量密度の大きな正極活物質と負極活物質が必要である。その候補として,正極では硫黄,空気中の酸素,より多くのNiを含む遷移金属酸化物などが提案されている。負極ではシリコンやリチウム金属が提案されている。本プロジェクトでは,これらの正極活物質と負極活物質を組み合わせた電池系に関する研究を行っている。表1に本プロジェクトで推進している革新電池の構成をまとめた。これらの電池を大別すると,リチウムイオン電池からの派生技術として位置づけできる電池と新しいタイプの電極反応を利用した電池の二つに分かれる。負極をシリコンやリチウム金属に変更し,正極はリチウムイオン電池で使用されているものを引き続き使用する電池では,負極の開発が重要である。一方,Li空気電池やLi硫黄電池では正極活物質の反応はリチウムイオ図1二酸化炭素排出量の計算,ガソリン車,ディーゼル車,電気自動車の製造から廃棄まで。電池の改良により削減される二酸化炭素量-2-鉱山第779号2019年10月