ブックタイトル鉱山2019年10月号

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概要

鉱山2019年10月号

全国鉱山・製錬所現場担当者会議特別講演革新電池プロジェクトALCA-SPRINGの研究成果首都大学東京大学院都市環境科学研究科金村聖志国立研究開発法人物質・材料研究機構魚崎浩平1.はじめに二酸化炭素全排出量の約10%にあたる自動車の排出量削減と再生可能エネルギーの安定的利用のためにはキーデバイスである低コストで高性能な蓄電池が必要である。しかし,現在普及しているリチウムイオン電池のエネルギー密度と出力密度には限界があり,革新的な次世代蓄電池が求められ,世界的な開発競争が激化している。国内でもいくつかの次世代蓄電池に関するプロジェクトが進行中であるが,ここでは文科省/科学技術振興機構(JST)の支援を受けて実施されているALCA-SPRINGプロジェクトの成果のポイントをまとめて紹介する。Li空気電池,Li硫黄電池,全固体電池,Mg電池に関する研究成果のポイントを紹介し,現時点でのこれらの革新電池の研究開発状況を説明する。2.ALCA-SPRINGの設立と推進2012年度に開催された文科省と経産省のエネルギーに関する合同検討会で,両省が連携すべき重要テーマとして「次世代蓄電池」が提言され,両省の概算要求に盛り込まれた。文科省プロジェクトについては両省関係者および有識者で構成されるWGで具体的実施内容を議論し,最終的に革新電池を実現するという観点を持ち,徹底したサイエンスに基づく新材料の探索・開発とそれを生かした電池システムの構築に向け,電池設計から材料開発や評価解析までを一気通貫で行うとともに,明確な知財ポリシーを持ち,世界の追随を許さない圧倒的な技術開発を目指すことを決定した。2013年度からJSTの先端的低炭素化技術開発プログラム(Advanced LowCarbon Technology Research and DevelopmentProgram:ALCA)の中に,次世代蓄電池研究の加速を目的とした特別重点技術領域『次世代蓄電池』(Specially Promoted Research forInnovative Next Generation Batteries:ALCA-SPRING)が設置され,公募に基づきチームリーダーが決定された。発足以来2度のステージゲートを経て,現在は全固体電池チーム(硫化物型および酸化物型サブチーム),正極不溶型リチウム硫黄電池チーム,次々世代蓄電池チーム(金属空気電池サブチーム,マグネシウム電池サブチーム)および共通課題(リチウム金属負極,評価・解析・共通材料)を扱う実用化加速推進チームで構成され,全国45機関,71研究室の400名以上の研究者が両省,JST,NEDO,有識者によるガバニングボードの下,関連プロジェクトと連携して研究を進めている。3.ALCA-SPRINGにおける革新電池の意義地球温暖化の原因である二酸化炭素の過剰な排出を食い止めるためには自然エネルギーの導入や電気自動車の普及が不可欠である。自然エネルギーを導入する場合には周波数変動を抑制し安定に電力を供給するために緩衝となる蓄電池システムが必要である。また,電気自動車に必要な蓄電池は,限られた空間に設置することが求められる。そのため,電池のエネルギー密度は大きくなければならない。二酸化炭素の削減を考えるとエネルギー密度の大きな電池が必須となる。電気自動車を例にとり説明する。内鉱山第779号2019年10月-1-