ブックタイトル鉱山2019年8・9月号

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概要

鉱山2019年8・9月号

利上げを実施したが,米中貿易摩擦の悪影響や株価の下落により米国経済は減速するとの見方から,来年の利上げ回数を下方修正する可能性を示した。市場では米国の景気拡大が転換点を迎えたとの見方が広がり,米株価は12月19~24日にかけて4営業日連続で年初来最安値を更新した。中国経済は第3四半期GDPが前年同期比6.5%増と2009年第1四半期以来の低い伸びにとどまり,国内外の需要が減退し,米国との貿易戦争激化による経済への影響が強まっている可能性が示された。12月31日のLME銅相場は$5,965と1月2日の$7,181から16.9%下落して越年した。2018年の最高値は6月8日の$7,262.5,最安値は9月4日の$5,823であった。・2019年1~3月2019年のLME銅相場は1月2日,$5,839でスタートし,前年に引き続き米中貿易摩擦や米中両国の景気指標を材料に月間を通じて$6,000割れを低迷推移したが,月末にかけては貿易協議の進展や米国の利上げ見送りが好感されて$6,000台を回復した。米中貿易戦争は米国が3月1日に設定していた対中国制裁関税引き上げの交渉期限を延長するとの観測が高まり,28日に延長が正式決定された。米国経済をめぐっては,2018年第4四半期実質GDP成長率が2.6%/年と市場予想を上回った。2018年通年の前年比2.9%は2015年と並ぶ3年ぶりの高い伸び率となった。しかし,各種経済指標は低調なため,3月には米国債市場で3月物と10年債の長短金利が逆転する逆イールド現象が起こった。3ヵ月/10年の逆イールドは2007年の世界金融危機以降初めてのことで,リセッションの兆候とみなされる。こうしたなか,FRBはバランスシートの縮小を9月末に停止する方針を示した。利上げ回数は今年がゼロ回,来年は1回とした。中国経済は2018年第4四半期の実質GDP成長率が前期比0.1%減で3期連続の減速,2009年第1四半期以来の低水準。2018年通年は6.6%増で2年ぶりの減速,1990年以来の低水準となった。また,2019年のGDP伸び率の目標は6.0~6.5%と昨年実績の6.6%を下回る水準に設定された。英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐっては,3月,英政府と欧州委員会(EC)が離脱協定修正案に合意したが,英議会で否決したため,英政府は離脱の延期をEUに申請した。EUは英議会に審議のための猶予を与えたが,英議会は再度否決したため,ハードブレグジットの可能性が高まった。2.需給(1)銅鉱石生産2018年の世界の銅鉱石生産は前年比3.0%増の20,867千tと2年ぶりに増加した。(表3参照)前年はそれまでの銅価格低迷を背景とした鉱山の新規稼働や能力増強の立ち遅れ,供給障害の頻発により停滞した。国際銅研究会によれば,2018年の世界の鉱石生産能力は24,082千tと前年比横ばいであったが,鉱山稼働率は83.8%から85.4%に上昇した。形態別には,乾式製錬向けの精鉱生産が2.3%増の16,667千t,SXEW(溶媒抽出電解採取法)向け生産は6.5%増の3,817千tと3年ぶりに増加に転じた。(表3,6参照)地域別には,アメリカが1.9%,アジアが4.9%,オセアニアが6.5%,アフリカが7.9%増加したが,ヨーロッパは2.2%減少した。アメリカ大陸では,世界最大の生産国チリが6.0%増の5,832千tと3年ぶりに増加に転じた。前年はエスコンディーダ鉱山の長期ストライキや全般的な品位低下により減少していた。ペルーは2016年にラスバンバス鉱山の商業生産開始とセロベルデ鉱山の能力増強により2百万t台-79-鉱山第778号2019年8・9月