ブックタイトル鉱山2019年8・9月号

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概要

鉱山2019年8・9月号

発生します。鉱石や変質岩は,鉄,亜鉛,マンガンやその他の金属が硫黄と結合した金属硫化鉱物を含んでいます。硫化鉱物はそのままの状態では水と反応しませんが,酸素と結合して酸化すると,金属イオンや水素イオン,硫酸イオンの形で水に溶けだします。坑内から湧出する水は,0ML長門向坑道からの湧水と,0ML以深からの湧水があります。0ML長門向坑道からの湧水は,水質が良好であり,無処理で白井川へ放流していますが,0ML以深からの湧水は,水質基準を満たしていないため,坑内で取水し,坑水処理を実施しています。取水された坑水は-121MLの揚水バックに集水され,揚水ポンプにより坑外の坑水処理場へポンプアップ(揚程190m)されます。処理原水(坑水)は,坑内揚水設備から坑外の坑水処理場の原水槽へ供給されます。原水は消石灰により中和処理し,固液分離されます。上澄水は,砂ろ過装置でろ過し,pH調整後,白井川へ放流しています。殿物は坑内充填で坑内へ戻すか,もしくはフィルタープレスで脱水ケークとし,おしどり沢捨石堆積場に運搬・堆積しています。本山坑水処理設備は,旧選鉱場の建屋を利用して建設,試運転の後2011年10月から本格稼働を開始しました。いずれの設備も,豪雪地帯である鉱山周辺の厳しい自然環境において,長期的,安定的,効率的に水を処理できるよう,世界でも類を見ない最新技術を導入して設計・施工したもので,民間の水処理設備としては画期的なものであります。豊羽鉱山が札幌市と締結した公害防止協定による水質基準は,国の排水基準(水質汚濁防止法)よりも厳しい内容でありますが,同設備による処理水はこれを安定的にクリアする良好な水質を維持しています。豊羽鉱山では,鉱山操業設備の撤去をはじめ,鉱さい堆積場を土で覆うことで植物が生育できる環境を整え,操業時に損なわれた自然環境の回復および生物多様性の維持改善に努めています。豊羽鉱山の維持管理はこれからの100年への環境保全の取組みといえるものです。見学後,本山坑水処理場前にて写真撮影を行い,宿泊場所である札幌市に向かいました。懇親会では,北の海の恵みに溢れた料理が並び,会員相互の懇親が進み,大いに盛り上がりました。翌日8時にホテルを出発,1時間半ほどでJX金属苫小牧ケミカル㈱に到着しました。同社は,1972年9月に操業開始したJX金属㈱の100%出資会社であり,グループ会社を通じ環境リサイクルネットワークを構築しています。また,北海道の産業拠点である苫小牧工業地帯に立地し,立地企業と有機的に結び合い,企業活動を廃棄物処理という側面から支援しています。事業内容は,産業廃棄物処理事業,資源リサイクル業(廃OA機器,携帯電話,リチウムイオン電池,廃バッテリー),フロン破壊処理業,硫酸関連事業に大別されます。写真2本山坑水処理場(旧選鉱場)写真3本山坑水処理場(屋内)鉱山第778号2019年8・9月-244-