ブックタイトル鉱山2019年8・9月号

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概要

鉱山2019年8・9月号

献,(iii)ハイレベル・イベント等を通じた我が国の取組みの発信,の3点を主な目的として臨み,政府代表団は,会議の各局面を通じておおむね達成できたと評価している。特に,2020年以降のパリ協定の本格運用に向けて,パリ協定の実施指針採択に合意したことは,パリ協定のモメンタムを維持し,世界全体で気候変動対策を進めていく上で非常に重要な成果であり,内容面でも,パリ協定の精神を貫徹した全ての国に共通のルールに合意し,透明性・実効性の高いものと評価できる。市場メカニズムについては,現在の作業状況に留意し,2019年11月チリで開催が予定されているCOP25での採択を目指して引き続き検討されることとなった。また,ハイレベル・セグメント等の機会に,ⅰ)我が国が,イノベーション等を通じて「環境と成長の好循環」を実現する世界のモデルとなること,ⅱ)全ての国がパリ協定を円滑に運用できるよう積極的に国際協力に取り組むこと等,気候変動対策への強いメッセージを,一貫して発信することができた。3.2国内政策の動向(1)我が国唯一の地球温暖化に関する総合計画「地球温暖化対策計画」国は,「日本の約束草案」を踏まえ,2016年5月に「地球温暖化対策計画」を決定した。「地球温暖化対策計画」は,中期目標として2030年度に地球温暖化ガスを2013年度比で26%削減することについて,各主体が取り組むべき対策や国の施策を明らかにし,削減目標達成への道筋を付けるとともに,「パリ協定」を踏まえ,全ての主要国が参加する公平且つ実効性ある国際枠組みのもと,主要排出国がその能力に応じた排出削減に取り組むよう国際社会を主導し,地球温暖化対策と経済成長を両立させることを前提に,長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すことを示している。また,国は,本計画への反映を念頭に,2016年4月に,エネルギーミックス実現のための「エネルギー革新戦略」及び抜本的な排出削減が見込める革新的技術の研究開発を強化する「エネルギー環境イノベーション戦略」を策定した。(2)2050年の目標に向けての長期戦略について2015年12月,COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において,先進国に対して法的拘束力のある温室効果ガス削減の数値目標を設定し,「京都メカニズム」と呼ばれる国際的な排出量取引の仕組みを導入する等,2005年に発効した「京都議定書」に代わる新たな地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が採択された。パリ協定は,2020年までに,今世紀後半(2050年以降)を展望した自国の「長期低排出発展戦略」(長期戦略)を提出するよう,締約国に招請しており,日本政府としても,2019年6月に開催されたG20大阪サミットに先立ち,パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略を策定し,閣議決定した。具体的には,2018年8月,経済界・学界など各界の有識者による「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会」(パリ協定長期成長戦略懇談会)が,内閣総理大臣の下に設置され,長期戦略に関する検討が進められている。本年3月には懇談会としての提言が取りまとめられ,提言内容を踏まえ政府としての長期戦略策定に向けた検討作業が行われた。2015年の国連におけるパリ協定やSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標(展開))の採択を背景に,世界では,環境(Environment),社会(Social),企業統治(Governance)に積極的に取り組む企業への投資であるESG投資拡大の動きもみられるなど,地球温暖化問題をはじめとするグローバルな課題への関心はますます高まっている。こうした中,2019年6月,初のG20サミットの議長国となった日本としては,今般策定された長期戦略を通じて,地球温暖化問題への取り組みを経済成長につなげるという積極的な「攻め」の姿勢を,国際社会に示すことができた。鉱山第778号2019年8・9月-188-