ブックタイトル鉱山2019年8・9月号

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概要

鉱山2019年8・9月号

動き,さらには地熱等のリードタイムの長い電源については,複数年分を一括して買取価格を決める制度となり,地質調査から発電所の稼動までに長時間を要する地熱発電開発にとって,大きな追い風となっている。政策面では,2018(平成30)年7月に「第5次エネルギー基本計画」が閣議決定され,地熱発電は発電コストが低く安定的に発電を行うことが可能なベースロード電源として位置付けられ,エネルギーミックスにおいては,地熱発電の2030(令和12)年度における導入見込み量として最大で約155万kW,発電電力量113億kWhの導入拡大が掲げられている。4.1地熱開発企業の動向2012(平成24)年12月,我が国の地熱発電事業の健全な普及推進を図るため,地熱発電開発を志す33社によって日本地熱協会が設立され,現在会員数は特別会員を含め82社に増加している。個別企業の活動を以下にあげる。・三菱マテリアル㈱は,岩手県八幡平市安比地域における環境アセスメント期間の短縮化を目指し,2014(平成26)年度にNEDO公募案件「環境アセスメント調査早期実施実証事業」に応募し,同地域において前倒し環境調査を実施し,2015(平成27)年10月,これまで共同調査を実施してきた三菱ガス化学㈱と安比地熱㈱を設立した。安比地熱㈱は,2017(平成29)年4月,環境影響評価準備書を経済産業省に届け出,岩手県及び八幡平市に送付し,2018(平成30)年1月に環境影響評価書を経済産業省に届け出て確定通知を受領し,同年2月に岩手県及び八幡平市に評価書を送付し,縦覧を行った。同年6月に電源開発㈱が安比地熱㈱に出資し,3社共同での事業推進体制となった。安比地熱㈱は2019(令和1)年6月に現地事務所を開設し,同年8月に安比地熱発電所(出力14,900kW)の建設工事を開始した。・JX金属㈱は,北海道豊羽地域における地熱発電の可能性について検討を行っている。2018(平成30)年度は,これまでに実施した調査結果をもとに新たな貯留層探索の検討を継続した。・日鉄鉱業㈱は,九州電力㈱の大霧発電所(鹿児島県霧島市)に向け,1996(平成8)年3月から発電用地熱蒸気の供給事業を開始し,これまで20年以上に亘り安定した蒸気供給を継続してきた。また,蒸気量の回復に取り組むため,NEPCの補助金を受けて2012(平成24)年度及び2014(平成26)年度に計2本の補充生産井を掘削すると共に,2016(平成28)年度には補充還元井を掘削した。鹿児島県霧島市の白水越地域では,2012(平成24)年にNEDOから調査井4本の譲渡を受けた。現在は白水越地域の地熱開発実現に向けて,地元の理解を得るための活動を行うと共に事業化に向けた技術検討を進めている。また,鹿児島県霧島市の野々湯温泉地域では,2016(平成28)年度にJOGMEC助成金を活用し,地熱発電開発可能性調査(地表調査)を実施した。現在は,掘削調査に進むための準備を行っている。・出光大分地熱㈱は,九州電力㈱滝上発電所向けに1996(平成8)年11月の運開以来,安定した発電用蒸気を供給してきた。同社は2016(平成28)年3月,今まで未使用であった滝上発電所の還元熱水を利用した滝上バイナリー発電所の営業運転を開始し安定した操業を行っている。秋田県小安地域の地熱開発において,出光興産㈱,国際石油開発帝石㈱及び三井石油開発㈱は,2018(平成30)年9月に小安地熱㈱を設立し同年12月環境アセスメントを開始した。・岩手県松尾八幡平地域では,日本重化学工業㈱,地熱エンジニアリング㈱,JFEエンジニアリング㈱,三井石油開発㈱及びJOGMECが出資者である岩手地熱㈱が2019(平成31)年1月に松尾八幡平地熱発電所の営業運転を開始させた(発電端7,499 kW,送電端7,000 kW)。-159-鉱山第778号2019年8・9月