ブックタイトル鉱山2019年8・9月号

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概要

鉱山2019年8・9月号

I.世界の需給テルル(テルリウム)米国地質調査所の調査によれば,2018年のテルルの世界生産量は約440tと推定され,前年よりも30tほど低下したとされている。この統計には,米,ドイツ,ベルギー,豪州などの実績が含まれていないため,これらを含めた世界生産の実態は600t程度と推定されている。このように全体増が不確かな中でも,中国は世界最大のテルル生産国であり,多種多様な原料からテルルを精錬しているが,2018年ではその生産量は300tと若干増加したと推定されている。一方,米国のテルル生産量は,2017年の生産量から実質的に変わらなかったと推定された。米国内の唯一の生産者は,少なくとも陽極スライムの一部を精製のためメキシコに出荷した。2018年のテルルの国際相場(月間平均価格)は,1月の約$52/kgから7月の約$100へ上昇した。その後,9月にかけて僅かに低下し,10月中旬までに$82水準となった。「ビスマス」の項でも述べた通り,2018年5月,米国内務省は,他の行政機関と連携して,テルルやビスマスを含む35の重要な鉱物リスト(83 FR 23295)を公表した。このリストは,大統領令13817「重要な鉱物の,安全で信頼できる供給を確保するための連邦政府の戦略」に従って(82 FR 60835),最初の重要鉱物を確認するために編纂された。2017年の米国のテルル輸入量はカナダと中国からの大量入荷で前年比55%の大幅増となった。ちなみに2017年1~9月の米国のカナダからのテルル輸入量は前年同期の35tから62tへ,同じように,同時期の中国からは6tから36tへ大幅に増加した。2018年の米国輸入は,主にカナダ,ドイツ,フィリピンからの大幅な輸入増により,前の年から約41%増加したと推定された。2018年の最初の9ヵ月間に,米国はカナダから119t,中国から32t,ドイツから24t,フィリピンから5tのテルルを輸入した。前年同期比では,それぞれ56tの増加,5tの減少,21tと4tの増加となった。2017年には,米国の中国からのテルル輸入の93%が8月から11月の間に輸入された。過去数年間,中国からのテルルの輸入のほとんどは1,2ヵ月と短期間で行われている。2018年9月の中国からの輸入は25tで,2018年の中国からの輸入の78%を占めた。米政府は,同国内の太陽光発電プロジェクトの促進を目指した新規太陽光発電設備建設の補助金と税額控除の制度を延長した。補助金は2016年末に失効したものの,2015年12月に米議会により通された法律は,2019年1月1日まで30%の太陽エネルギー控除を延長した。2019年1月1日以降は,控除は2022年1月1日に10%に達するまで徐々に減少し始め,10%に達した後のその10%控除は2022年以降にスタートする新しい施設建設のために残ることになっている。Ⅱ.米国の需給2018年現在,テキサス州の企業が粗銅のスライム及び鉛精錬のスキミングから副産物として商用テルルを生産している。そのテルルの一次生産者と下流の生産者達はさらに,国内の及び輸入の金属を精製して,二酸化テルル,高純度テルル,特殊用途のためのテルル化合物を製造している。テルルはテルル化カドミウム(CdTe)太陽電池の製造に使用されるが,これは米国におけるテルルの主要な最終用途である。他の用途は加工性を向上させるための鋼中の合金化添加物,導電性を低下させることなく,被削性を向上させる銅合金中のマイナーな添加物,振動疲労に対する耐性を向上させるための鉛合金中の添加物,チルの深さを制御するための鋳鉄中の添加-149-鉱山第778号2019年8・9月