ブックタイトル鉱山2019年8・9月号

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概要

鉱山2019年8・9月号

国別輸入量は,最も多い日本が978t(前年比16%減),韓国が784t(同18%減)となった。韓国では,亜鉛製錬所が環境基準に抵触していたことや,高麗亜鉛の火災事故などにより亜鉛生産が滞ったことで,2018年はカドミウムの輸出量が減少した。一方で,これまでほとんど輸出のなかった中国が910tとなった。中国の突如とした大規模輸出の背景は不明だが,宝飾品や顔料への取締りが強化されていることが背景にあるとされている。中国需要の縮小が進行すれば,国際相場に与えるインドの影響力がさらに増すことになる。アルム出版社の「レアメタル・ニュース」によれば,インドでは,塩化ビニルの安定剤向けが伸びているほか,装飾品向けめっきもヒンズー教の祭事ごとに大きな需要があり好調を維持しているとのことである。2014年にモディ大統領が就任してから同国はインフラ整備に力を入れ,都市の一部を除き普及の遅れていたインフラの整備が全国的に進展中である。農業の灌漑用や家庭用トイレの普及など,水道インフラで塩化ビニル製のパイプ需要が伸びている。短期的にみればカドミウム製品に規制をかける可能性は薄く,同国の塩ビ市場の拡大はしばらく続くとみられている。3.米国の需給動向(表1,2参照)米国における2社が2018年にカドミウム地金を生産している。ひとつはテネシー州で操業している会社で,焙焼硫化物の濃縮物から亜鉛浸出の副産物として一次の精製カドミウムを回収している。もうひとつはオハイオ州で操業している会社で,廃ニカド電池やそれ以外のカドミウムを含むスクラップから二次カドミウム地金を回収している。米国内では,カドミウム地金及び化合物は,主に合金,めっき,ニカド電池,顔料,プラスチック安定剤のために消費されている。二次カドミウム地金は主に使用済みの民生用及び産業用ニカド電池から回収され,生産される。カドミウムを回収できるその他の廃棄物やスクラップは,電気アーク炉(EAF)からのカドミウム含有ダスト,銅-カドミウム合金スクラップ,またいくつかの複雑な組成の非鉄合金スクラップなどである。2018年4月,米国を拠点とするテルル化カドミウム薄膜太陽電池メーカーは,国内の太陽光発電技術への強い需要と最近の米国の法人税政策の変更により,オハイオ州に第二の製造工場を建設する計画を発表した。建設は2018年半ばにスタート,施設は2019年末までにフル稼働率に達すると予想されている。4.世界のカドミウム埋蔵量カドミウムは一般的に亜鉛鉱石及び亜鉛精鉱から回収される。閃亜鉛鉱は,経済的に最も重要な亜鉛鉱石で,一般的に亜鉛とある程度類似の化学的特性を共有しているカドミウムが僅かながら含まれている。また閃亜鉛鉱結晶格子中の亜鉛を置換することが多い。カドミウムミネラル硫カドミウム鉱は頻繁に風化閃亜鉛鉱及びウルツ鉱と関連している。また中部米国の亜鉛を保有する石炭と他国の石炭紀の石炭は大規模に経済限界下のカドミニウム・リソースが含まれている。Ⅱ.国内の需給1.カドミウム地金生産(表3参照)2018年の国内カドミウム地金生産は,国内の亜鉛地金生産が前年に引き続き微減だったことから,前年比8.7%減の2,108tと2年ぶりに低下した。国内の需要の激減により,カドミウム生産者の多くがカドミウム品位の低い亜鉛鉱石を嗜好しているため,生産の減少傾向は続くことになろう。2.カドミウム地金消費(表3,4,図1,2参照)2018年の内需(見掛け消費)は近年最も低い2016年を大きく下回り,648tと2年ぶりに前年比大幅減となった。同じく,内需(報告値)も501tで前年比31.2%減と前年実績を大きく下回った。需要全体の98.2%を占める電池向けは,鉱山第778号2019年8・9月-134-