ブックタイトル鉱山2019年8・9月号

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概要

鉱山2019年8・9月号

LMEニッケル相場は7月に入り投機要因の出尽くし感から頭打ちとなり,9月にかけて$12,000台へと反落基調を辿った。FRBは米国の第2四半期GDP成長率が2014年第3四半期以来の高水準となるなか,9月に3回目の利上げを実施した。これに対し,中国は3四半期ぶりに減速に転じた。米中貿易摩擦は米国が7月に対中制裁関税を発動,8月には第2弾,9月には第3弾を発動,中国もその都度報復関税で応じるなどエスカレートした。LMEニッケル相場は10月の$12,000台から下落し,11月は$11,000台,12月には前年10月以来の安値圏となる$10,000台へと続落した。米国経済はGDP成長率が第3四半期に入って鈍化し,国債市場では長短期金利が逆転する逆イールド現象が起きた。FRBは4回目の利上げを実施したが,米中貿易摩擦による景気減速に懸念を示した。こうしたなか,米株価は12月下旬にかけて年初来最安値を更新した。中国経済は第3四半期GDPが2009年第1四半期以来の伸びに鈍化した。年末相場は$10,595と年初$12,690から16.5%下落して越年した。2018年の最高値は$15,750(6月7日),最安値は$10,595(12月27日),年間平均は$13,118で前年比26.0%上昇し,2014年以来の高値となった。2019年LMEニッケル相場は$10,444でスタートし,2月に$12,000台,3月には$13,000台へと回復基調を辿った。米中貿易戦争をめぐっては,米国が3月1日に設定していた対中国制裁関税引き上げの交渉期限を延長した。米国経済は2018年のGDP成長率が2015年と並ぶ3年ぶりの高い伸び率となったが,FRBは利上げを見送った。しかし,3月には米国債市場で2007年の世界金融危機以降初めて3ヵ月/10年の逆イールドが起こりリセッション入り懸念が強まった。中国経済は2018年第4四半期GDPが3期連続の減速となり,2018年通年では1990年以来の低水準となった。英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐっては,3月,英政府と欧州委員会(EC)が離脱協定修正案に合意したが,英議会が否決したためハードブレグジットの可能性が高まった。2.需給(1)生産2018年の世界のニッケル鉱石生産は前年比8.3%増の2,300千tと2年連続で増加し,2013年以来の高水準に回復した。ニッケル(リファインドニッケル,フェロニッケル,酸化ニッケル,ニッケル銑鉄,硫酸ニッケル)生産は7.6%増の2,207tと2年連続で過去最高を更新した。(表3,4,5参照)地域別には,アメリカ大陸の鉱石生産が5.1%減の290千t,ニッケル生産が10.3%減の429千tであった。国別では,カナダの鉱石生産が前年のストビー,バーチツリー鉱山の操業休止を主因に14.8%減の180千t,ニッケルが前年のトンプソン製錬所の操業縮小のため13.6%減の133千tとそれぞれ2010年,1999年以来の低水準に落ち込んだ。なお,ヴァーレはカッパークリフ製錬所の大気排出削減プロジェクトを完了した。ブラジルはオンサプマ鉱山製錬所の操業停止命令により鉱石生産が3.1%減の74千t,ニッケル生産が4.8%減の65千tにとどまった。前年,セロマトソ鉱山が品位低下に見舞われたコロンビアは鉱石生産が4.6%増の48千t,ニッケル生産が6.2%増の43千tへと回復した。キューバは鉱石が3.4%減の51千t,ニッケルが16.7%増の17千tとなった。グアテマラは鉱石生産が26.3%増の40千t,ニッケルが18.5%増の15千tとフェニックス製錬所の立ち上げで増加傾向を辿っている。ドミニカは鉱石生産が16.7%増の18千t,ニッケルが9.0%増の17千t。米国の鉱石生産は20.4%減の18千t。表2ニッケル需給バランス(単位:1000t,%)暦年2014年2015年2016年2017年2018年18/17?産1,987.91,976.31,986.92,050.02,206.57.6消費1,868.01,875.72,032.72,183.52,327.46.6需給バランス119.8100.6▲45.8▲133.5▲120.9(出典)World Nickel Statistics 2019.6-123-鉱山第778号2019年8・9月