ブックタイトル鉱山2019年8・9月号

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概要

鉱山2019年8・9月号

などタイト化を強めていることも材料視された。しかし,3月にはトランプ米大統領が安全保障上の脅威を理由に鉄鋼,アルミニウムに追加関税を発動し,対象国に中国も含まれた。さらに,中国が知的財産権を侵害しているとして,中国製品に対する制裁関税を課す大統領令に署名した。このため,LME亜鉛相場は3月に入って$3,200台に反落した。LME亜鉛相場は4月も続落し,5~6月は$3,000水準を推移した。米国経済は引き続き好調に推移し,FRBは6月に2回目の利上げを実施した。米中貿易摩擦は4月に入って中国が米国の鉄鋼,アルミニウム輸入制限に対抗して米報復関税を発動,6月には米国が対中制裁関税を発表した。LME亜鉛相場は7月に入って$3,000を割り込み,8~9月は前年6月以来となる$2,400~2,500圏を推移した。FRBは米国の第2四半期GDP成長率が2014年第3四半期以来の高水準となるなか,9月に3回目の利上げを実施した。これに対し,中国は3四半期ぶりに減速に転じた。米中貿易摩擦は米国が7月に対中制裁関税を発動,8月には第2弾,9月には第3弾を発動,中国もその都度報復関税で応じるなどエスカレートした。LME亜鉛相場は10~12月にかけても$2,500~2,600圏を横ばい推移し,年末相場は$2,510.50と年初比25.7%下落して越年した。米国経済はGDP成長率が第3四半期に入って鈍化し,国債市場では長短期金利が逆転する逆イールド現象が起きた。FRBは4回目の利上げを実施したが,米中貿易摩擦による景気減速に懸念を示した。こうしたなか,米株価は12月下旬にかけて年初来最安値を更新した。中国経済は第3四半期GDPが2009年第1四半期以来の伸びに鈍化した。2018年の最高値は$3,618(2月16日),最安値は$2,287(9月17日),年間平均は$2,925で前年比1.1%下落した。2019年1月のLME亜鉛相場は$2,462でスタートしたが,3月にかけて$3,000水準へと回復基調を辿った。米中貿易戦争をめぐっては,米国が3月1日に設定していた対中国制裁関税引き上げの交渉期限を延長した。米国経済は2018年のGDP成長率が2015年と並ぶ3年ぶりの高い伸び率となったが,FRBは利上げを見送った。しかし,3月には米国債市場で2007年の世界金融危機以降初めて3ヵ月/10年の逆イールドが起こりリセッション入り懸念が強まった。中国経済は2018年第4四半期GDPが3期連続の減速となり,2018年通年では1990年以来の低水準となった。英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐっては,3月,英政府と欧州委員会(EC)が離脱協定修正案に合意したが,英議会が否決したためハードブレグジットの可能性が高まった。2.需給(1)亜鉛鉱石生産2018年の世界の亜鉛鉱石生産は前年比1.7%増の12,743千tと2016年にかけての価格の長期低迷を背景とした前年までの減少傾向に歯止めがかかった。(表3参照)世界の亜鉛鉱石生産能力は2015年に激減したが,2016年は81千t,2017年は417千t,2018年は一気に954千tへと増加した。(鉛―海外の項,表7,表8-1参照)地域別には,アメリカが2.8%,オセアニアが31.6%,ヨーロッパが5.3%増加,アフリカが横ばい,アジアが3.5%減少した。アジアでは,中国が3.8%減の4,311千tと2年連続で減少した。中国政府は供給構造改革,環境規制政策を継続しており,前年実施された環境査察により環境汚染鉱山,製錬所が閉鎖された。インドは10.5%減の740千t,カザフスタンは345千tで横ばい,トルコは17.9%増の184千t,イランは7.1%減の130千tであった。アメリカ大陸では,ペルーが慢性的なストライキや抗議活動のため1,475千tの横ばいにとどまった。米国はエンパイアステート鉱山の再開により7.8%増の858千tとなった。メキシコ鉱山第778号2019年8・9月-108-