ブックタイトル鉱山2019年7月号

ページ
40/70

このページは 鉱山2019年7月号 の電子ブックに掲載されている40ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

鉱山2019年7月号

なる。しかしこの試料では垂直方向の磁化曲線が立っており,磁場がゼロのときの磁化(残留磁化)が有限の値をとっていることから,非常に大きな磁気異方性が発現していることがうかがえる。図5(b)からそのK u値は1.5×10 6 J/m 3と見積もられ,これは第一原理計算の結果と同程度の大きな値である。図4からこの試料(t=2 nm)での軸比c /aは1.25付近である。また図5(b)をみると,膜厚tの増加に従って磁気異方性定数K uは減少傾向にあり,これは図4でみられた軸比c /aの減少傾向と一致する。これらのことから,ここで発現している磁気異方性は正方晶歪み由来であることが強く示唆される。以上より,手法Aを用いることで,極めて薄い膜厚(数nmオーダー)でbct構造を実験的に形成することに成功し,第一原理計算の結果と同程度の大きな磁気異方性が発現することを実証できた。しかしながら膜厚が5 nm以上では,格子緩和が生じて元のbcc構造に戻ってしまうことがわかった。このことから,将来的にバルクのtFC磁石を開発するには,さらなる厚膜領域でのbct構造の安定化が重要であることがわかる。3-2.手法Bによる正方晶FeCoの厚膜化手法Aの適用限界であるt>5 nmの厚膜領域においてbct FeCo構造を安定化するために,筆者の研究室ではこれまでに様々な第三元素の添加効果を検討してきた[23]。本稿では,2017年に特許出願を行い[22]かつ2019年に論文で報告fcc1.501.40●(XRD)○(TEM)c/a1.301.201.10bcc1.000 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20FeCo thickness, t (nm)図4 MgO sub./Rh/FeCo(t nm)/SiO 2の軸比c /aと膜厚tの関係Kerr signal (a.u.)0.30.20.10-0.1-0.2⊥t =20.0 nm15.0 nm10.0 nm5.0 nm3.0 nm2.0 nmK u (10 6 J/m 3 )2.52.01.51.00.5-0.3-1 -0.5 0 0.5 1Magnetic field,μ0 H (T)(a)0.00 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20FeCo thickness, t (nm)(b)図5 MgO sub./Rh/FeCo(t nm)/SiO 2の(a)膜面垂直方向(⊥)のMOKE磁化曲線と(b)K uのt依存性鉱山第777号2019年7月-32-