ブックタイトル鉱山2019年7月号

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概要

鉱山2019年7月号

です。トピックスとしては50周年の2006年に電気炉を更新された際に世界初のハイブリッド冷却方式を取り入れたとお聞きし,積極的に新たな技術にも取り組まれていることを感じました。鉱石は酸化鉱のサプロライト鉱で主にインドネシアとニューカレドニアから輸入されていたのですが,現在は品質面などの問題からニューカレドニア品だけとのことです。鉱石中の成分はNi:1.5~2.2%,Fe:10~25%,MgO:20~32%,SiO 2;33~45%,水分:20~30%などです。鉱石の3~4銘柄を調合し,まずロータリードライヤで付着水を飛ばし,次にキルンにて石炭と一緒に800~850℃で焼成させ,電気炉にて還元しクルードメタル(1400~1450℃)とスラグ(1550~1600℃)に分離します。クルードメタルはスターラ脱硫機にて脱硫後,水中鋳造で製品のFe-Niショットとなります。電気炉で分離されたスラグは水砕後グリーンサンドという製品名で鉄鋼の溶剤やコンクリート細骨材や路盤材として50万t/年販売されます。環境面では工程内の排ガスは電気集塵機やバグフィルターによって除塵後放出,廃水はシックナーによって懸濁物質を沈降分離して放流されており環境面にも力を入れていることを感じました。また工場内の緑地化も積極的に進められていました。主な設備はキルン2基,電気炉2基(現在は1基のみ稼働)で,従業員163名で平均年齢39歳のかなり若い従業員構成となっていました。以上の説明の後,見学用上着に着替え,ヘルメット・マスク・安全眼鏡を装着し見学開始となりました。まずバスで岸壁に移動しました。バースは3万tクラスの船が入るとのことですが意外にコンパクトです。構内道路を挟んでバースの向かいに貯鉱舎があり屋根付きと屋根なしの2つの貯鉱舎が並んでいます。鉱石は茶色の粘土のようでいかにも水分が多いと感じられ,銅精鉱を見慣れていると異質な感じがします。次はドライヤです。5mφ×40m×1基の大きな設備で,付着水を飛ばし水分で5%程度落とすそうです。鉱石中の結晶水までは除去しないとのことです。次からはバスを降り5班に分かれ徒歩にて見学です。キルンは4.8mφ×105m×2基という巨大な設備で圧倒されます。この設備で完全乾燥と石炭による大部分のNi還元と一部のFe還元を行っているそうです。石炭投入部などいろいろな改善を図られているのが感じられます。次に制御室です。整頓された室内はDCS管理に変更したということで工程全般を管理できるようにレイアウトされています。そして電気炉です。17.5mφ×65MVAという巨大な電気炉でこの設備にもただ圧倒されます。当製錬所では電気炉以降の工程がバッチ作業ということのようです。焼鉱を溶融還元し2~3時間ごとにメタルとスラグを抜くとのことです。電気炉の電極は成形体の継ぎ足し方式ではなく,拳大状の自焼成電極材料を上から補給投入する方式とのことで電極交換等の手間はあまりないそうです。また世界初導入というハイブリッド冷却方式も実際に見せていただきました。電極近傍はジャケット冷却でその他は一般的な散水方式という効率的な方式と思われました。抜き出されたメタルはCaC 2を加えてスターラ脱硫機で脱硫したのちレードルを傾け水中鋳造してショット製造となりますが,ちょうど鋳造の最中を拝見し,ショットのサイズ管理等で注湯も大分検討されたのかと感じました。また銅製錬を見慣れている自分としてはFe-Ni製造設備の予想外の規模の大きさをあらためて認識しました。これで見学は終了ですが,工場全般整理整頓が行き届いており,従業員の方々もすれ違えば「ご安全に」のあいさつを交わしてくれました。これは工場の皆様の日頃の努力のたまものと思われました。見学終了後は質疑の時間ですが,工程とはあまり関係のないような質問や常識的な質問にも親身に回答いただき,最後に会議室にて集合写鉱山第777号2019年7月-14-