ブックタイトル鉱山2019年7月号

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概要

鉱山2019年7月号

ロジェクトについては両省関係者および有識者で構成されるWGで具体的実施内容を議論し,最終的に革新電池を実現するという観点を持ち,徹底したサイエンスに基づく新材料の探索・開発とそれを生かした電池システムの構築に向け,電池設計から材料開発や評価解析までを一気通貫で行うとともに,明確な知財ポリシーを持ち,世界の追随を許さない圧倒的な技術開発を目指すことを決定した。2013年度からJSTの先端的低炭素化技術開発プログラム(Advanced LowCarbon Technology Research and DevelopmentProgram:ALCA)の中に,次世代蓄電池研究の加速を目的とした特別重点技術領域『次世代蓄電池』(Specially Promoted Research forInnovative Next Generation Batteries:ALCA-SPRING)が設置され,公募に基づきチームリーダーが決定された。発足以来2度のステージゲートを経て,現在は全固体電池チーム(硫化物型および酸化物型サブチーム),正極不溶型リチウム硫黄電池チーム,次々世代蓄電池チーム(金属空気電池サブチーム,マグネシウム電池サブチーム)および共通課題(リチウム金属負極,評価・解析・共通材料)を扱う実用化加速推進チームで構成され,全国45機関,71研究室の400名以上の研究者が両省,JST,NEDO,有識者によるガバニングボードの下,関連プロジェクトと連携して研究を進めている。以下,本プロジェクトで取り上げた各電池系の現状と課題を述べる。2・2各種電池系の進捗1)硫化物系固体電解質を使用した全固体電池硫化物系固体電解質はLi +イオン伝導性が高く,可塑性を有しているためプレス成型法などで電池の作製が可能であり,既に試作電池の作製に成功し,成果をNEDO SOLiD-EVプロジェクトに移管,量産化に向けた検討が行われている。この電池の最大の問題は水分あるいは正極活物質と固体電解質との反応である。前者については新規硫化物系電解質により反応性(硫化水素発生量)の低減に成功している。後者については,正極に硫黄を使用することで,本質的にこの問題を解決する方向での研究が進展している。大量生産においてはシート成形法を用いた固体電池の作製の可能性についてその実証試験が始まっている。電気自動車用電池として数十Ahあるいはそれ以上の容量を有する電池の試作を実施しており,実用化に向けた取り組みの成果が上がることを期待している。2)酸化物系固体電解質を使用した全固体電池酸化物系固体電解質のLi +イオン伝導性は硫化物系固体電解質よりも低く,可塑性も小さい。そのための電解質と正極活物質を接合する手法が問題である。高温での熱処理により界面接合はできるが,電解質と正極活物質が反応して抵抗層が形成されたり,活物質そのものが分解する。したがって,現状の高温プロセスを低温化する手法が求められる。既に,フラックス法などの手法の提案をしており,固体電解質あるいは固体電解質・正極活物質界面に関する研究から電池作製の研究に徐々に移行しつつある。3)リチウム-硫黄電池本電池の最大の課題である正極活物質の溶出防止に焦点を絞り,研究を行ってきた。電解液側からの研究と正極(硫黄)活物質側からの研究を実施している。テトラグライムにLiTFSAを等モル溶解した溶媒和イオン液体を中心に検討を進め,現在はスルホンがより優れた溶媒であることを提案している。硫黄を炭素材料のマイクロ細孔に導入した新しい硫黄・炭素複合体正極を提案し,その高容量化にも成功している。加えて,リチウム金属負極側の研究も進めている。既に,積層タイプの電池の試作を開始している。4)リチウム-空気電池リチウム金属を負極,空気中の酸素を正極活物質とすることで理論的には高いエネルギー密度が期待できるが,開放系の電池であり,技術的にハードルが高い。正極では酸素の還元により生成したO - 2イオンとLi +イオンが反応しLi 2 O 2鉱山第777号2019年7月-2-