国際銅研究会(ICSG)2022年10月総会報告 (プレスリリース)
2022-10-21
国際銅研究会(ICSG)2022年10月総会報告
2022年10月20日
日本鉱業協会 企画調査部
2022年の秋季国際銅研究会(ICSG)総会は、10月18日および19日(現地時間)にポルトガルのリスボンにて行われ、加盟国政府代表及び業界の代表者が会議に参加した。日本からは政府代表に加えて数名の業界関係者が参加した。10月19日付けでプレス発表された世界の銅需給見通しは次の通りである。
1.2022年と2023年の世界の銅需給予測(添付 世界 銅需給総括表:ICSGプレスリリース参照)
1)銅鉱石生産
世界の銅鉱石生産量は、2022年で3.9%、2023年で5.3%増加と予測。
- 世界の銅鉱石生産量は継続的に増加するものの、2022年4月のICSG予測の増加率5%から3.9%へ低下した。
- COVID-19関連の諸制限と鉱山労働者の欠勤、操業低下、ストライキ、チリでの干ばつ、粗鉱品位低下、ペルーでの地域住民の反対運動により2022年の生産量は予定より減産となった。
- しかしながら、2022年の世界の銅鉱石生産はDRコンゴ、インドネシアをはじめとする国々での新規鉱山操業開始と既存の鉱山の増産による追い風を受け増加した。
- 過去4年では、わずか2つの大規模銅鉱山のみが操業を開始しただけであったが(2017-2020年)、進行中のプロジェクトは増加している。2021年から2023年においては、DRコンゴのカモア・カクラとテンケ・フングルメ(増産)、ペルーのケジャベコ、チリのスペンス、ケブラダ・ブランカ2、などが操業開始予定である。また、いくつかの中小銅鉱山も操業開始・増産である。
- 2023年には、世界の鉱石生産量は約5.3%の増加が見込まれる。
- SX-EW生産は、2022年は2021年の減少から回復する見込みである。2023年にはDRコンゴにおける既存鉱山の増産と新規プロジェクトを主因とし、メキシコ、ペルー、米国で増産見込みである。一方、チリでのSX-EW生産は、引き続き減少していく見込みである。
2)銅地金生産
世界全体の銅地金生産量は、2022年に2.8%、2023年に約3.3%増加と予測。
- 2022年の銅地金生産量の増加率は当初予測の4.3%から2.8%に低下した。これは製錬所の生産障害、SX-EWプラントの増強遅れと予定外のメンテナンスと閉鎖によるものである。これらは主に、チリ、ブラジル、メキシコ、米国、ザンビアとEUの数か国で生じた。
- 2022年及び2023年の世界の銅地金生産量の増加は、主に中国の製錬所の電解工程設備の増強とDRコンゴでのSX-EWプラントの新規操業開始と増産によると見込んでいる。
- 世界の一次原料(銅精鉱)由来、二次原料(スクラップ)由来での銅地金生産量は共に2023年で更に増加する見込み。一次原料由来の銅地金は銅精鉱の増産、二次原料由来は製錬所の処理能力の拡大がそれぞれ増加要因。2023年のSX-EW由来の銅地金生産量は、チリでの減産見込みが影響し、2022年の生産量からわずかに低下する見込み。
3)銅地金消費
世界の銅地金見掛け消費量は、2022年に約2.2%、2023年に約1.4%増加と予測。
- エネルギー価格の高騰と急激なインフレーションによる世界経済の展望の悪化、2022年4月にICSGが予測した銅地金消費量予測数値は2022年、2023年ともに下方修正した。
- 世界の中国以外の国々の銅地金消費量増加率見込みは、2022年は2.8%から1.8%、2023年は3.9%から2.5%に低下した。
- 中国の銅地金見掛け需要は2022年で2.5%増加すると見込まれる。2022年1-7月の中国の銅地金純輸入量が10%増加したことから、増加率を上方修正した。中国の2023年の銅地金見掛け消費の増加率は約1%。
- 世界の経済指標は厳しいものの、銅の最終消費分野での生産量は持続的に成長していく見込みが示されている。
- 銅は経済活動、特に現代の技術社会において不可欠である。加えて、主要国におけるインフラの拡充と、クリーンエネルギーと電気自動車活用という世界的トレンドが、長期にわたる銅需要増加要因となるだろう。
4)銅地金需給バランス
世界の銅地金需給予測は、2022年には約32万5千トン消費が生産を上回り、2023年には約15万5千トン生産が消費を上回る見込み。
- ICSGは、グローバル市場のバランスは様々な需給要因により変化するものであると認識している。そのため、予見できない要因により、実際の需給がICSGの予測から逸脱することは起こりうる。
- ICSGは、グローバルな市場需給予測の際に、未報告である種々の中国の在庫(国家備蓄、生産者、消費者、貿易業者、保税区域)の増減は考慮に入れていない。これらの在庫は、在庫積み増しや、放出によっては世界の需給を大きく変える要因である。なお、中国の見掛け消費量は(生産+輸入−輸出+/+SHFE在庫増減)によって算出している。
- ICSGは2022年には約32万5千トン消費が生産を上回ると予測。好調な中国の見掛け消費と、銅生産の伸び率が低かったことが理由。2023年には、主に地金生産の増加により約15万5千トン生産が消費を上回る見込み。
2. ICSGの次回総会日程
2023年4月にポルトガル リスボンにて実開催予定。
以上
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