国際銅研究会(ICSG)2020年10月総会報告
国際銅研究会(ICSG)2020年10月総会報告
2020年10月22日
日本鉱業協会企画調査部
2020年の秋季国際銅研究会(ICSG)総会は、10月14日と15日にポルトガルのリスボンを基点としてWeb会議にて行なわれ、加盟国からの政府および業界の代表者などが会議に参加した。日本からは政府代表に加えて数名の業界関係者が必要に応じてオンライン会議に参加した。10月19日付けでプレス発表された世界の銅需給見通しは次のとおりである。
1 2020年と2021年の世界の銅需給予測(添付の需給総括表参照)
1)銅鉱石生産
世界の銅鉱石生産量は、2019年実績は2,053万トンだったが、2020年は1.5%減の2,022万トン、2021年は4.6%増の2,115万トンになると予測した。
- 2019年の減少はインドネシアの銅鉱山の操業不調などによるものだったが、2020年の減少はCOVID-19感染拡大の影響によって、チリを除くペルーや多くの国での一時的な鉱山の操業停止が要因である。今回の2020年の鉱石生産量予測は、前回2019年10月に発表した予測を70万トン下回った。
- 2021年の銅鉱石生産量は4.6%の増加を予想しているが、これは今後のCOVID-19感染拡大防止対策の対応に左右される。2020年のCOVID-19感染拡大からの回復や鉱山の新たな操業、拡張、大規模プロジェクトの立ち上げなどによって増加すると予測している。
2)銅地金生産
世界の銅地金生産量は、2019年実績は2,405万トンだったが、2020年は1.6%増の2,443万トン、2021年も1.6%増の2,482万トンになると予測した。
・2020年はインド他における製錬所の操業停止とCOVID-19感染拡大の影響によりベルギー、ブラジル、インド、米国などで生産量が減少する。しかしながら、2019年に設備増強のため製錬所を一時操業停止していたチリやザンビアの銅地金生産は大幅に回復する。コンゴ民主共和国の生産も引き続き増加すると予想される。
- 中国は、COVID-19感染拡大の影響による操業停止、スクラップ供給の逼迫、精鉱供給の減少、硫酸市場の供給過剰などにより、年初に減産となったため当初の予想を下回ることが見込まれる。
- これにより2020年の地金生産量は、前回2019年10月より85万トン減と予測。
- スクラップその他原料由来の銅地金生産量は、COVID-19感染拡大に伴うスクラップの生産、回収、加工、輸送の減少に伴う不足により、2020年は5.5%の減少が見込まれている。また、SX-EWの生産量は、主にラテンアメリカでの生産量減少により3%の減少を見込んでいる。それと対照的に、精鉱産銅地金生産は4.5%の増加が見込まれる。
- 2021年の新地金銅生産量は、鉱山生産量の伸びが少ないため増加は限定的だと予想される。しかしながら、SX-EWの生産はコンゴ民主共和国の増産と米国での新規製錬所の操業開始により回復すると予想される。
3)銅地金消費
世界の銅地金消費量は、2019年実績は2,443万トンだったが、2020年は0.2%増の2,449万トン、2021年は1.1%増の2,475万トンになると予測した。
- COVID-19感染拡大の影響により、中国を除く世界の銅消費量は2020 年に9%減少すると予測している。これはEU (8%減)や米国(6%減)、インド、日本、ASEAN などで大幅な減少が見込まれていることによる。しかしながら中国で銅地金の輸入が大幅に増加していることによって見掛け消費量が急増するため、相殺されると予測している。
- 2021年の中国を除く世界の銅消費量は、世界経済が全般的に回復していることから5%の増加。中国の見掛け消費量は、 2020 年の高水準の銅地金輸入を調整分も含めて2%の減少になると予測している。
- 銅は経済活動に欠かせず、現代の技術社会には必要不可欠であるため、需要は継続的に伸びていくと予想される。中国やインドなどの主要国のインフラ整備や、クリーンエネルギー移行への世界的な流れが銅の需要を支えていくことになる。
4)銅地金需給バランス
世界の銅需給バランスは、2020年は5.2万トンの供給不足、2021年は6.9万トンの供給過剰になると予測した。
- 今回の予測値は、COVID-19感染拡大の状況によって大きく変化する可能性があることに留意することが必要である。
- 需給バランスは中国の見掛け消費量を基に計算しているものであるが国家備蓄、生産者、消費者などの在庫は考慮されていない。
- 前回2019年10月に発表した2020年需給バランス予測は28.1万トンの供給過剰で、今回の予測は5.2万トンの供給不足となったが、これは中国の見掛け消費量が予想を上回ったためである。
2 ICSGの次回総会日程
ポルトガルのリスボンで2021年4月29〜30日に予定。
添付:世界の銅地金生産量と消費量予測(ICSG発表)
World Refined Copper Usage and Supply Forecast
Thousand metric tonnes, copper
FORECAST TO |
||||||||||
REGIONS
(‘000 t Cu) |
MINE PRODUCTION |
REFINED PRODUCTION |
REFINED USAGE |
|||||||
2019 |
2020 |
2021 |
2019 |
2020 |
2021 |
2019 |
2020 |
2021 |
||
Africa N.America Latin America Asean-10 Asia ex Asean/CIS Asia-CIS EU Europe Others Oceania |
2,247 2,627 8,779 742 2,415 906 861 919 1,033 |
2,327 2,519 8,506 840 2,461 906 874 1,069 946 |
2,516 2,680 9,058 1,032 2,582 911 837 1,149 1,020 |
1,379 1,727 2,780 734 12,662 499 2,579 1,261 426 |
1,482 1,634 2,941 726 12,859 507 2,701 1,281 394 |
1,635 1,870 3,062 718 13,460 504 2,760 1,254 400 |
180 2,389 428 1,199 16,195 106 3,071 853 5 |
162 2,228 381 1,021 16,941 102 2,831 816 5 |
169 2,335 393 1,154 16,758 106 2,983 842 5 |
|
TOTAL |
20,528 |
20,446 |
21,784 |
24,045 |
24,523 |
25,662 |
24,427 |
24,486 |
24,745 |
|
World adjusted 1/ 2/ |
20,528 |
20,223 |
21,151 |
24,045 |
24,434 |
24,815 |
24,427 |
24,486 |
24,745 |
|
% change |
-0.2% |
-1.5% |
4.6% |
-0.1% |
1.6% |
1.6% |
-0.2% |
0.2% |
1.1% |
|
World Refined Balance (China apparant usage basis) |
-382 |
-52 |
69 |
1/ Based on a formula for the difference between the projected copper availability in concentrates and the projected use in primary electrolytic refined production. 2/ Allowance for supply disruptions based on average ICSG forecast deviations for previous 5 years.
以上
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