国際ニッケル研究会(INSG)2023年4月総会報告(プレスリリース)

2023-04-28

国際ニッケル研究会(INSG)2023年4月総会報告

2023年4月28日
日本鉱業協会企画調査部

2023年の春季国際ニッケル研究会(INSG総会は、4月24日及び25日にポルトガルのリスボンで開催され、加盟国の政府や業界、国際機関などの関係者が参加した。4月26日付けで発表されたプレスリリースは次のとおりである。

1 2023年の世界のニッケル市場

世界経済はCOVID19感染拡大による低迷から徐々に回復し、ウクライナ紛争による影響も改善しつつある。また、中国はゼロコロナ政策を終了し、景気は回復傾向にある。エネルギーの供給制約の緩和と多くの中央銀行による金融引き締め政策がインフレ率を低下させているが、それらの政策は同時に金融業界へ悪影響を及ぼすこととなった。

国際ステンレス鋼協会旧ISSFの発表によると、2022年のステンレス鋼の生産量は、2021年比5減の5530万トンであった。

2023年については、中国の新エネルギー自動車(NEV)に対する購入補助金廃止の影響は出るものの、ステンレス鋼向け需要の緩やかな回復と電気自動車(EV)バッテリー向け需要の増加が引き続き見込まれる。

インドネシア政府は、2020年1月より未加工のニッケル鉱石輸出を禁止した。その結果、中国はNPIニッケル・ピッグ・アイアン)用の鉱石原料不足になったため、中国のNPI生産量は減少した。NPI生産は、引き続きインドネシアで増加し、中国では減少する。また、インドネシアのNPI生産は、一部がニッケルマットに切り替わると見込まれる。インドネシアでは、MHPニッケル・コバルト混合水酸化物)を生産する目的でHPALプロジェクト(高圧酸化浸出プロセス)が進められており、今後も生産量が拡大する見込みである。2023年3月には初の硫酸ニッケルプロジェクトが建設を開始した。

世界の新産ニッケル生産量は、2021年は2610万トン、2022年は3060万トンで、2023年は337.4万トンに達すると予測した。ただし、生産中止等の事態は含まれていない。

世界の新産ニッケル消費量は、2021年は 2 77.9万トン 、2022年は2955 万トンで 、2023年は313.4万トンに増加すると予測し た 。

したがって、2021年は16.9万トン消費が生産を上回り、2022年は10.5万トン生産が消費を上回ったが、2023年は23.9万トン生産が消費を上回る見込みである。歴史的に見ると、ニッケルの需給はLMEで取引されるクラスⅠニッケルの生産量に由来していたが、2023年はクラスⅡニッケルや硫酸ニッケルを主としたニッケル化合物の生産量に起因した需給バランスとなる。

2 統計委員会

統計委員会では、一連の発表と議論を通じて、統計に関する建設的な意見を収集した。

安泰科(中国)のチーフアナリストであるシュウ・アイドン氏は、「中国とインドネシアのニッケル産業」に関する分析を発表した。

ベルギーに本部を置く国際ステンレス鋼協会の経済・統計・製品担当ディレクターのカイ・ハーセンクレバー氏は、「ステンレス鋼市場の見通し」についてプレゼンテーションを行った。

3 産業関係者討議(IAP)

世界のニッケル生産、消費、リサイクル業界の代表者で構成される産業関係者討議(IAP)においても、貴重な情報が提供された。

メタ・ニッケル・コバルト(トルコ)のプロジェクト管理担当部長であるオヌール・ビロル氏は、同社の「ゴルデス・プロジェクト」に関する最新情報を説明した。

ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス(英)の価格・データ・指標担当部長のダニエル・フレッチャー・マニュエル氏は、「リチウムイオン電池材料2023年とその後の伝達機構と原動力の視点で」についてプレゼンテーションを行った。

グレンコア(スイス)のマーケティング部長であるディミトリー・クズネツォフ氏は、グローバル・バッテリー・アライアンスが立ち上げた世界初の「バッテリーパスポートへの参加」に関する説明を行った。

4 環境経済委員会

環境経済委員会では、ニッケルに関する経済的な問題や動向、環境、健康、安全に関する規制の変更など、幅広いテーマの議論が行われた。

ニッケル・インスティテュートのH&E公共政策担当部長であるヴェロニク・ストゥーカース博士は、「ニッケルのライフサイクル」に関する分析を発表した。

CRU(英)の製錬資産アナリストのジェームズ・バーチ氏は、「ベースメタルに関するCRU社の炭素排出モデル」について説明を行った。

ユーロメタックス(ベルギー)のエネルギー・気候変動担当ディレクターであるアディーナ・ジョルジェスク氏は、「欧州の金属事業におけるエネルギーコストの影響」についてプレゼンテーションを行った。

5 合同研究会セミナー

国際ニッケル研究会、国際鉛亜鉛研究会、国際銅研究会の合同セミナー「ベースメタル採掘への投資促進」を2023年4月26日午後に開催する。

6 INSGの次回総会日程

2023年10月に開催予定。

講演者が発表したプレゼンテーションは、INSGのウェブサイトに掲載する。詳細については、事務局まで問い合わせいただくか、ウェブサイトwww.insg.orgにアクセスしてください。

以上

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