国際ニッケル研究会(INSG)2022年10月総会報告(プレスリリース)

2022-10-20

国際ニッケル研究会(INSG)2022年10月総会報告

2022年10月20日
日本鉱業協会企画調査部

2022年の秋季国際ニッケル研究会(INSG)総会は、10月17日及び18日にポルトガルのリスボンで開催され、加盟国の政府や業界、国際機関などの関係者が参加した。10月18日付けで発表されたプレスリリースは次のとおりである。

1 2022年及び2023年の世界のニッケル市場

政府と業界の参加者は、会議においてニッケル市場の動向について広範囲に議論を行った。COVID-19の感染拡大とウクライナ情勢の悪化という複合的な要因によって、エネルギー供給制約やインフレ率の上昇、経済成長率の低下が生じ、世界の市場の不確実性が高まった。

国際ステンレス鋼協会(旧ISSF)の発表によると、2022年1~3月のステンレス鋼の生産量は、2021年1~3月比3.8%減の1,450万トンであった。

2022年については、ステンレス鋼の生産量は減少を見込んでいるが、EV(電気自動車)用バッテリー向けのニッケル生産及び需要は増加が見込まれる。2023年については、どちらも生産量が拡大すると予測している。

インドネシア政府は、2020年1月より未加工のニッケル鉱石輸出を禁止した。その結果、中国はNPI(ニッケル・ピッグ・アイアン)用の鉱石原料不足になったため、中国のNPI生産量は減少した。NPI生産は、引き続きインドネシアで増加し、中国では減少する。また、インドネシアのNPI生産は、一部がニッケルマットに切り替わると見込まれる。インドネシアでは、MHP(ニッケル・コバルト混合水酸化物)を生産する目的でHPALプロジェクト(高圧酸化浸出プロセス)が進められており、今後も生産量が拡大する見込みである。中間製品であるニッケルマットとMHPはいずれも中国に輸出され、硫酸ニッケルに加工されてEV用電池に使用される。

世界の新産ニッケル生産量は、2021年は261.2万トンで、2022年は303.6万トン、2023年は338.7万トンに達すると予測した。ただし、生産中止等の事態は含まれていない。

世界の新産ニッケル消費量は、2021年は277.5万トンで、2022年は289.2万トン、2023年は321.6万トンに増加すると予測した。

したがって、2021年は16.3万トン消費が生産を上回ったが、2022年は14.4万トン生産が消費を上回り、2023年も17.1万トン生産が消費を上回る見込みである。歴史的に見ると、ニッケルの需給はLMEで取引されるクラスⅠニッケルの生産量に由来していたが、2023年はクラスⅡニッケルや硫酸ニッケルを主としたニッケル化合物の生産量に起因した需給バランスとなる。

2 統計委員会

統計委員会では、一連の発表と議論を通じて、統計に関する建設的な意見を収集した。

安泰科(中国)のアナリストであるリリアン・リウ氏は、「インドネシアとフィリピンのニッケル市場に関する調査」について中間報告を行った。

CRU(英)の主席アナリストであるパノス・コツェラス氏は、「世界のステンレス鋼市場の現状」に関する分析を発表した。

LME(英)の営業本部長であるアルバート・ショドー氏は、「LMEのニッケル契約」についてプレゼンテーションを行った。

3 産業関係者討議(IAP)

世界のニッケル生産、消費、リサイクル業界の代表者で構成される産業関係者討議(IAP)においても、貴重な情報が提供された。

フィリピン環境天然資源省(DENR)の鉱⼭地質局長であるウィルフレッド・モンカノ氏は、「フィリピン鉱山業のロードマップ」についてプレゼンテーションを行った。

オリックス・ステンレス(ドイツ)のトビアス・カマーCEOは、同社の事業内容として「ステンレス鋼生産におけるスクラップの利用及び調達」について発表を行った。

ブラジリアン・ニッケル(ブラジル、英の合弁)の技術部長であるアンネ・オクスリー氏は、同社のニッケル生産状況とプロジェクトについて説明した。

4 環境経済委員会

環境経済委員会では、ニッケルに関する経済的な問題や動向、環境、健康、安全に関する規制の変更など、幅広いテーマの議論が行われた。

ニッケル・インスティテュートのH&E公共政策担当部長であるヴェロニク・ストゥーカース博士は、「ニッケルに影響を与える規制の動向」に関する分析を発表した。

欧州鉱業協会のエネルギー・気候担当部長であるフロリアン・アンダーフーバー博士は、「原材料に関するEUの戦略と政策」について説明を行った。

ロー・モーション(英)のアダム・パナイ社長は、「EV用バッテリー市場の最新動向とニッケル需要への影響」に関する報告書の重要な項目を発表した。

5 合同研究会セミナー「グリーンエネルギーへの移行における金属の役割」

国際ニッケル研究会、国際鉛亜鉛研究会、国際銅研究会の合同セミナー「グリーンエネルギーへの移行における金属の役割」を2022年10月23日に開催する。

6 INSGの次回総会日程

2023年4月に開催予定。

講演者が発表したプレゼンテーションは、INSGのウェブサイトに掲載する。詳細については、事務局まで問い合わせいただくか、ウェブサイトwww.insg.orgにアクセスしてください。

 

以上

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